ドウテイ脱出への道-4
◇ ◇ ◇
そんないきさつを思い出しながら、俺は腕時計をチラリと覗き込んだ。
どれくらい待っただろうか。
集合場所のN駅前のロータリーは相変わらず閑散としていて、人も車もほとんど通らない。
腰を掛けようとしても、焼けつくような日射しのせいで、ベンチは鉄板のように熱いから座ることもままならない。
そのせいか、そろそろみんなだらけ始めて来た。
「おい、誰か歩仁内に電話しろよ」
キャップのつばをつまんで深くかぶり直した修が、痺れを切らしてそう言った。
「ったく、早く来ねえと電車来ちまうぞ」
バタバタと手をうちわみたいにして扇ぐ修の脇で、本間さんがスマホを取り出していた。
「でもさ、私達も何か準備しなくてよかったのかなあ」
ポツリとそう言ったのは石澤さんだ。
「だよね。歩仁内くんだけに準備させるのは申し訳ないよね」
沙織も彼女の言葉にウンウンと頷いていた。
確かにキャンプをするにはそれなりの準備が必要なはず。
夕飯は何にするかは決めていないものの、キャンプと言ったらバーベキュー辺りが鉄板だろうか。
だとしたら、肉や野菜や飲み物他にも、炭とか網とか必要だと思う。
いや、後片付けのことを考えるともっと必要なものは次々出てくるはずだ。
なのに歩仁内は、「自分達の着替えとか水着を用意するくらいでいいから」と、ろくに準備物の指示もしないままにこの日を迎えさせたのだ。
「ま、アイツがしなくていいって言ってんならそうするしかねえだろ」
修が欠伸をしながら言った。
確かに歩仁内のことだから、抜かりなくやるのはわかっていたけど、でもあまりに適当過ぎる気もして、ホントにちゃんとキャンプが出来るのか、不安な所もあった。
大丈夫なのか、このキャンプは。
「……そう、うん。わかった」
そんな時、歩仁内との電話を終えた本間さんが、スマホをショルダーバッグの中にしまい込んでから、俺達をぐるりと見回した。
「歩仁内くん、もう到着するところだって」
本間さんが言うや否や、背後からクラクションが短く2回鳴る音が聞こえ、俺達は一斉に後ろを振り返った。