三角関係-3
愛の言葉を囁きながら女を抱くのは人生初の事で、かなり恥ずかしかったがひどく燃えた。
会ってから今までの4年分と、これから先の分まで。
身体の隅々まで愛撫を施し、思い付くありったけの愛の言葉を伝え、溢れる程の愛を注いだ。
カリーはその全てを受け入れ、嬉しそうに応えてくれた。
カリーをたっぷり愛して、疲れ果てて2人してソファーで寝ていたスランは、明け方に目が覚めた。
そのまま寝る気にもなれず、何となく屋上へと足を向ける。
朝靄に包まれた屋上には、ゼインが居た。
一瞬、ギクリとしたスランだったが後悔はしてないし、許してもらおうとも思わなかったのでそのまま彼に近づく。
「よぉ、寝てねぇのか?」
振り向いたゼインは息を吐いて苦笑した。
「寝れるかっつうの」
愛する女が愛する男と浮気中なのに平静でいられる筈がない。
ゼインは肉体改造されたうえに魔物で、嗅覚も聴覚も鋭い。
スランとカリーの会話も、その後どうなったかも全て分かっている。
「嫌なら止めろよ」
「ああ〜う〜ん……嫌……つうか……」
カリーが他の男に抱かれるのは腸が煮えくり返る程ムカつくが、相手がスランだと別の意味でムカつく。
羨ましい、と思ってしまうのだ。
スランに愛されるカリーも、カリーに受け入れられるスランも。
「なんつうか……もう、ワケわかんねぇから、とりあえず走ってきた」
聞きたく無いし、嗅ぎたく無いのでクラスタ領地をひと晩中走り回っていた。
「おかげで何となく吹っ切れたっつうか、納得したというか……とにかく、この変な感情は認めるしかねぇかな、と思えた」
カリーが好きでスランが好きで、2人共好きだから2人が望むならそうすれば良い。
「だけど、アイツを手放す気は無い」
キッパリと言い放ったゼインに、スランは喉を鳴らして笑った。
「ああ、そうしてくれ。2人を頼むな」
スランの言葉にゼインは溜め息をつく。
「やっぱ、一緒には行けねぇか?」
一緒に行こうと誘ったが、スランは行かないと即答した。
「俺はお前らが好き合ってんのが好きだ。だから行かねぇ」
2人の間に割り込んで掻き回すのも好きだが、息子であるテオドアに良い影響があるとは思えない。