三角関係-2
「アタシ達ってさぁ……どっかオカシイのかも……ね」
「だな」
カリーもスランも暗殺者だし、ゼインも奴隷。
3人とも『死』と隣り合わせに生きてきている。
あまりにも……『死』を見すぎて、感情のどこかが壊れているのかもしれない。
「妊娠したって分かった時ね……すぐアンタの子供って分かって……スッゴい嬉しかった」
「へえ?」
スランはグラスに口をつけて、珍しく素直なカリーの言葉に耳を傾けた。
「アンタなんか大嫌いで、殺しちゃおって思ってたのにね〜」
「へえ……」
好きだの嫌いだの忙しい奴だな、と思いつつ苦笑する。
「人の大事なファーストキスを無理矢理奪うわ、弱味につけこんで好き勝手するわ……挙げ句の果てにゼインの心まで奪うわ……マジでムカついた」
「まあなぁ」
4年前の事を思い出し、スランはクスクス笑った。
「ねぇ……子供産んだ女は抱けない?」
ぶはあっ
いきなりとんでもない事を聞かれ、スランは酒を吹き出す。
「やだっ最悪」
「げほっ……お前な」
スランは咳き込みながら涙目をカリーに向け、ギクリと身体を強張らせた。
酔っているのかと思っていたカリーは、凄く真面目な表情だったのだ。
「チビが好きなんだろ?」
「アンタも好き」
「チビも呼ぶか?」
何だったら3人で楽しもうと言うスランに、カリーは小さく首を横に振る。
「アンタに愛されるゼインを見るのはイヤだし、ゼインを愛してるアンタを見るのもイヤ。今は……アタシだけ見て」
カリーがジリジリと間を詰めるのを、スランはじっと待っていた。
多分、彼女の立ち位置が一番難しい。
スランは2人ひと組で好き。
ゼインは女はカリー、男ならスラン、といった感じか?
だとしたら同時に2人の男を愛してしまったカリーは、自分が物凄く浮気者に思えて複雑な心境なのだろう。
なら今は、彼女の望むまま、彼女だけを愛してやろう。
正直、そうやって複雑な心境に困っている姿も萌えポイントなのだ。
「……愛してるよ、カリオペ」
スランは今まで女を抱く時に一度だって口にした事が無い言葉を囁き、そっと唇を重ねる。
唇を離すと目の前にある赤い眼がキラキラと眩しい位に輝いていた。
「アタシも、スランが好き」
カリーは嬉しそうに答えると、4年たっても変わらず下手くそなキスを返した。