夢しんリャク-8
はチ
真っ暗な部屋で、私はパソコンに向かっている。
仄青い画面だけが、闇にぼんやり浮かんでいた。
・・・あの後いつもの精神科から電話がかかってきて、事の真相を聞かされた。
――自分の夢が、どういうわけか現実の失踪事件とリンクしていた事。
それがあまりに事件と符合し過ぎていたため、先生が警察に通報した事。
捜査に完全に行き詰まっていた警察が、藁にもすがる思いでその‘世迷言’に人員を割き、私の周囲を見張っていた事――。
昨日病院に行ったら、先生はとってつけたような笑顔を浮かべて、「とにかく事件は解決したんですから、もう大丈夫ですよ」と、太鼓判を押してくれた。
でも処方箋を見てみたら、いつもの薬が10mg増えていた。これで処方できる量の上限いっぱいだ。
ちなみにニュースによれば、捕まったヤツは廃人同然で、取調べは一向に進んでいないらしい。どうせそのうち、お決まりの精神鑑定にかけられて、減刑されたりするのだろう。
ふぅ。
そこまで考えて、パソコンを打つ手を止めて一息つく。
ところで、私はさっきから、いったい何を打ちこんでいるのだろう?
考え事をしているのに、手だけが別の生き物みたいに、勝手に動きつづけているんだが。
仄青い画面には、見た事も無い記号の羅列が並んでいる。
「見た事も無い」はずなのに、それにはこう、書かれていた。