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夢しんリャク
【ホラー その他小説】

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夢しんリャク-3

さん
薄暗く狭い路地を、女を追って走っている。
女は時おり振り返り、強姦魔を見るような目つきで私を見て、また必死で駆けていく。失敬な――と言いたいが、事実そんなところだろう。だってどうせ、また夢の中なのだから。

最初は気味が悪いだけだった夢たちも、慣れてくると意外に悪くない。気軽に犯罪気分が味わえる。身体的にも法律的にも完全に安全な場所から、犯罪者の目線を愉しめる。
今だって恐怖に引き攣る女の顔に、妙に興奮している。女が時おりしか振り向かないのもイイ。一種のチラリズムだ。獲物を追い駆ける肉食獣は、こんな気持ちなのかしら。

暗くて汚い路地裏を、女を追いかけ回して走る。だが追い駆けっこは、女が行き止まりに逃げ込んで終わりを告げた。

女が壁を背にしてへたり込み、「私」に引き攣った顔を向けてくる。・・・やはりチラリズムは大事だ。のべつ幕なし見せられると、引き攣った顔なんてただの不細工ヅラだ。
顔を見るのに飽きたのか、「私」の視線は女の全体像を捉える。黒のスーツに身を包んだOL風の女。就活中の女子大生だろうか?それにしては、乱れた足下を覆う黒のストッキングがやけにセクシーだ。股がうっすらと開かれて、奥のショーツが…やっぱり、チラリズムは大事。

もはや抵抗の意志も失せた女に、「私」はゆっくり近付いていく。追っている最中から、「私」の右手は妙な重みを感じていた。女も、「私」の右手を目で追っている。

女の前に立った「私」が、右手を振りかざして横に薙いだ。
ざくっ、肉の斬れる小気味よい音。もう一度…がつっ、今度は硬い物に当たる感触。さらにもう一度――がつっ。がつっ、がつっ、がつっ、がつっ、がつっ、すぱん。
最後にもう一度肉の感触が伝わって、女の顔が「私」の顔と同じ高さに来た。
なるほど。引き攣った不細工ヅラも、こうして ‘固定’してしまうと、芸術品のような趣が出てくる――チラリズムに対する永遠性の美、といったところか。

そんな事を私は考えながら、「私」は女を室外機の上にちょんと置く。
恐怖と痛みに引き攣ったまま、女の首はあらぬ方を睨みつけ続けている。


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