第三話 深肛悦-1
昼見世で霧橋花魁が、黒い客人によって七回も逝かされてしまった。そのうち最後の三回は凄絶な逝きざまだっ た。そして、夕方から深夜まで眠りこけてしまい、一度、小用に立ったが、すぐまた布団に倒れ込み、翌日の朝五ツ(午前八時頃)になってよ うよう布団から這い出してきた。
「まったくもう……、あたいとしたことが、とんだ醜態をさらしてしまったもんだ」
自分の座敷で、霧橋が横座りで脇息に身をあずけ、自嘲の笑いを漏らした。そばでは飼い猫のタマが寝そべり、陣 中見舞いに来たという歓八を見ながら白い尾をぱたんぱたんとやっていた。
「花魁、見舞いの品の甘露梅、おひとついかがでしょう」
差し出された菓子を物憂げに受け取り、霧橋は少しだけ口に含んだ。シソの葉で包んだ青梅の砂糖漬けを歓八がタ マの鼻先にも持っていったが、白猫はそっけなく顔をそらした。
「でも、姉さん、たいそう気持ちよさげだったよね、昨日は」
妹女郎の霧舟が歓八の隣に座り、ばりばりと盛大な音たてて巻煎餅を食べながら言う。こちらの菓子は幇間が豪丸 屋の女郎みんなのために買ってきたものだった。
「最後のほうなんて獣じみた声あげてたし……」
おかしそうに言う振袖新造を霧橋は軽くにらみつけたが、ふと、視線を宙に泳がせた。
「でも不思議だねえ。早漏気味かと思ったあの黒い異人。二度目のまぐわいではおそろしく長持ちしたんだ よ……」
「そりゃあ、あれじゃないですかい」歓八は笑いをこらえながら言葉を継いだ。「黒いすりこぎで延々こねくり回 されてるうちに、花魁のあすこがゆるくなってしまい、魔羅への刺激が弱くなってしまったと……」
「なんだってえ!」
霧橋が食いかけの甘露梅を投げつけようとした。だが、仕草だけで、上げた手を戻して二口目をかじった。
「しかしねえ、歓八。あの長い肉竿で、女の奥のほうをこつんこつん、しつこくやられてごらんな。はじめは少し 痛くても、そのうち旨味がにじみ出てくるってもんだよ」
「あたくしは男なんで、そう言われても分かりませんがね」
「今度、けつの穴を掘ってもらいなよ、あの黒いのに」
「いやあ、あたくしのけつはもう、人様は店じまいしてしまったんで……」
「張形しか入れないってかい」
「張形もいいものでございますよ。なにしろ萎えるってことがない」
ぽんぽん言いあう二人をよそに、霧舟がぽつりと言った。
「しかし、長かったねえ、あの異人の黒魔羅。最後まで全部は姉さんに入らなかったし……」
「そうかえ? まるっとは入ってなかったかえ?」
「根元のところが、ひとにぎりは余ってたような……」
すると、霧橋が幇間に命じた。