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雨が雪に変わる夜に
【女性向け 官能小説】

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疑心暗鬼-2

 秋月はカップを持ち上げ、コーヒーを一口飲んだ後、決心したように夏輝の目を見ながら話し始めた。
「以前、貴女にはお話ししたことがあったでしょう? 僕の別れた彼女のこと」
「はい。高校の時の同級生の方、でしたよね? 確か」
「そうです。名前を薄野亜紀って言います。」
「亜紀さん……素敵なお名前」夏輝はにっこりと微笑んだ。

 遼はコーヒーを一口飲んだ。
「実に男らしくない話なんですけど、僕はやっぱり彼女のことが忘れられないんです」

「逆に男らしいって思います。ずっと一人の女性を好きでいられるって」
「そ、そうですか?」
「ええ」
「でも、僕から別れを切り出した手前、復縁を持ちかけるのをずっと躊躇っていた」

 夏輝は黙ってうなずいた。

「でも、先週高校の時の同窓会が駅前であって、僕はそれに遅れて行ったんですけど、その時、友人の話では、先に来ていた亜紀は、当時の同級生の狩谷っていう男と一緒に途中で出て行ったと……」
 遼の喉元でぐっという音がして、夏輝が顔を上げた時、遼は苦しそうに顔を顰めて目をぎゅっと閉じていた。
「秋月さん……」
「亜紀は今フリーなわけだし、彼女がそんな風に誰かと一緒にいても、僕が嫉妬する謂われも権利もないけれど……、この気持ちが騒ぐのを僕は押さえられなかった……」
「無理も……ないです」

 遼はいきなり顔を上げて声を荒げた。「でも、昨日、僕はパトカーの中からこの店の、丁度このテーブルにいた亜紀を偶然見てしまったんです」
「昨日……そうだったんですか」
「その時亜紀とこうして向かい合ってたのは、狩谷とは別の背の高い、髪を金色に染めた男だった!」

 テーブルに乗せられた遼の拳はぶるぶると震えていた。

 遼ははじけ出しそうになる興奮を必死になって抑えながら続けた。「それを見た途端、僕はあいつに幻滅した。」
「秋月さん……」
「でも、同時にますますあいつへの想いが胸をひどく締め付け始めたんです」
 遼の目には涙が浮かんでいた。彼は慌ててポケットからライトグリーンのハンカチを取り出して、乱暴に目元を拭った。
「……ごめんなさい、日向さん」


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