歪な氷雪-28
実の父親に処女を捧げる気分はどうなのか、雅治には想像もつかない。しかもまだ十八歳にも満たない体で何を知ろうとしているのだろう。
雅治は思う。今夜の出来事がきっかけで、だらしない関係をずるずると続けていくことになるかもしれないのだ。美羽の体に異変が起きてからでは遅い。
娘を妊娠させる父親──考えただけでおそろしい。
だがその一方で、そういう愛の形があってもいいのではないかとも思っていた。
苦痛に歪む娘の顔にも、不思議と悦びの色がうかがえる。
「お父さん……」
美羽は涙ぐんだ。雅治は美羽の二の腕をさすった。
「無理しなくていいんだぞ」
娘の血を見たくない雅治は思いやる。
「おねがいだから、やめないで……」
「いいんだな?」
「うん……」
ひとつの布団にくるまり、禁断の扉をこじ開けて、べとべとに濡れた肌を重ねていく二人。
挿入を進めるたびに、美羽の中から熱い潤いが溢れ出してくる。水深は徐々に深くなる。どうせならいちばん奥で繋がりたい。
父娘それぞれのセックスシンボルが互いを求め合い、今ようやく結ばれた。
「ふ、う、ん……」
あえぎ声は美羽のものだ。憧れていた快感にはほど遠く、痛みしか感じないはずである。
野薔薇の美しさに目を奪われ、緑色の棘(とげ)に触れて泣いている少女──たとえば美羽はそういう不器用な娘なのだと雅治は思う。
「あう、はう……」
あえぎ乱れる美羽の膣の奥行きに、雅治は底知れぬ官能をおぼえた。そこから生まれる快感に全身が震える。
わずかに腰を揺すり、性器を出し入れした。
美羽は首を振りながら、ひいひいと痛がった。鼻が詰まったような声になっていた。
「んはっ、はっ、はっ……」
侘びしい声になったり、
「あっ、あんっ、んっ……」
求める声になったり、そうやって美羽もセックスに溺れていくのである。
今時の女子高校生──という発想も幼稚に思えるくらい、美羽の膣は雅治の欲望に応えてくれていた。
だからこそ雅治は、美羽の痛みが和らぐまでずっと挿入したままでいたのだった。
朝まで娘と抱き合っていられるのなら、こんなに幸せなことはない。
「嘘みたい……」
美羽が言う。
「お父さんと、こんなふうになるなんて、嘘みたい……」
美羽は繰り返した。そして、
「奇跡かもしれない……」
と強調した。
まったくその通りだと雅治も思った。雪崩の事故に巻き込まれた時にも美羽は奇跡的に助かった。だとするとこれは奇跡の再来ということになる。