歪な氷雪-18
雅治はゆらゆらとトイレを出て、自分の気持ちを確かめるためにふたたびテレビの前に座った。
動画を再生させると、レイプの被害者となった少女とその父親らしき人物が映った。二人は険しい表情で会話を交わしている。
おまえをひどい目に遭わせたのはどこのどいつだ、と父は詰問するが、衰弱しきった様子の娘は頑(かたく)なに口を閉ざしている。
仕方がないので、とりあえず警察に被害届を出そうと父が提案する。
「それだけはやめて」
娘は反発を露わにした。そんなことをしても傷口を広げるだけだと考えているのだろう。
けれども父は納得しない。なぜ相手を庇うんだと目くじらを立てる。
説得してもわかってもらえない父を前に、娘はすすり泣くばかりだ。
すると突然、
「気持ちよかったのか?」
投げやりな口調で父が言う。
質問の意味がわからないといったふうに、娘は目を泳がせていた。
「相手の男に体をもてあそばれて、ほんとうは気持ちよかったんだろう。違うか?」
何かを暗示するように父は繰り返した。そして娘に触れようと近づいていく。
「お父さん?」
娘の台詞には、血の繋がりを疑う部分が含まれていた。父親の形相が今までのものと明らかに違っていたのだ。
こっちへおいで、と父はさらに迫る。後ずさりする娘の手を掴み、ぐっと引き寄せた。
「はなして」
喚きながら逃げ出そうとする娘に、父親の仮面をかぶった男はついに本音を漏らす。
「俺が慰めてやる」
遠まわしに近親相姦を宣告したのだ。
彼女は衝撃を受けたことだろう。その純朴な顔に絶望の色を浮かべたまま、娘は父によって汚されていった。
レイプというかたちで使い捨て同然に処女を奪われた体に、父親の凌辱がべっとりと塗り重ねられていく。
乳房と呼ぶにはあまりにも貧弱な胸のふくらみは、父に抱かれた手の中で乱暴に揉みほぐされ、乳首は指で練り込まれる。
乳房も乳首も二つずつあるので、父は両手を存分に駆使した。唇を強引に奪い、薄ら笑いの合間にまた口づける。
「やめて、お父さん、だめ……」
きゃんきゃんきゃんと娘は叫んだ。どこか遠慮したような悲鳴に聞こえるのは、相手が身内の人間だからだろう。
強姦されてもなお家族であることを放棄しない娘の姿は、とても哀れで美しくなかった。