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吉原昼景色
【歴史物 官能小説】

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第一話 尻稽古-2

さきほどの唐橋の部屋はひと間だったが、姉女郎にあたる霧橋は座敷持といって二間続きの部屋を有しておりその内装も豪華だった。

 引き戸を開けると霧橋の飼い猫であるタマが座布団の上で片脚をピンと上げ、腿の付け根に顔を埋めて毛づくろ いをしていた。一瞬、歓八に目をくれる。白い毛並みに青い瞳が美しい。が、すぐに顔を股間に戻し、舐めることに専念した。

「花魁、失礼しますよ。歓八でございます」

奥の間に歩を進めると、タマのご主人様である霧橋が三つ重ねの布団の上、薄い衣一枚で飼い猫と同じ格好をして いた。跳ね上げた片脚の白さ、その肉付きにハッと息を呑む。が、やっていることは色気とはほど遠いものだった。

「花魁、下の毛の処理でございますかい?」

歓八の言葉に霧橋は快活に答えた。

「ああ、そうさ。下の毛、もっと詳しく言やあ尻穴の毛を抜いてるのさ」

毛抜きで生えかけた短い縮れ毛を抜き、

「痛っ……」

黒曜石の輝きを持つ黒目がちの瞳にうっすらと涙を浮かべた。それを片手でぬぐうと、

「タマと遊ぶのかえ。いいよ。たんと遊んでおあげな。そして、せいぜい猫の珍しい動きでも見つけるがいいさ」

「おありがとうございます」

「でもそのかわり、あとで振袖新造(ふりそでしんぞう)の霧舟に尻穴の稽古をつけてやっておくれよ」

振袖新造とは、先ほどすれ違った禿のような者が成長した十五歳くらいの遊女のことである。

「霧舟の尻の穴ですかい? それはよござんすが、月の物で前の穴が使えねえ時に尻穴を差し出すたあ、あそびめ もご苦労さまなこってすねえ」

「地の女(しろうと)は尻穴ですることを嫌い、あたいら遊女でさえ釜を抜かれるのは嫌なんだけど、ここの楼主 はがめつくて『月夜には釜を抜かれろ』って言うからねえ」

霧橋は苦笑すると、そばに置いてあった二枚貝を手にし、貝殻から膏薬を指ですくい取って毛を抜いたあとに塗り 込んだ。



 白猫のタマとひとしきり遊んだあと、歓八は行灯部屋へ足を運んだ。この部屋は行灯や布団を収納している薄暗 い部屋で、遊郭で遊んだはいいものの金を払えない客がいると、そいつを閉じ込めておくために使われることもあった。小さな障子からのぼん やりした光しかない狭い部屋の壁際に幇間が腰をおろすと、ややあって若い女郎が入ってきた。


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