Taste-1
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―――セリスが国境に住まう老領主の館から帰って半月が経とうとしていた。
城に戻ってからのセリスは文字通りフィガロ王国の王妃という肩書きの下で公務に追われることになった。
夫である国王エドガーに随伴するものもあれば、
王妃単独で表敬に出掛けたり又は表敬を受けたり、
或いはエドガーが国内のあちこちを巡視に出向く際は城に残って必要な書類に代行印を押したり等々。
一見華やかなイメージが先行しがちな王妃だが、
実際にはこのような陰ながら苦労することも多分に存在するのだ。
セリス自身はエドガーと結婚してから年数も重ねていたので、
この頃には漸く仕事を捌けるようにはなっていた。
その代わり、夫エドガーとの“夜の交わり”は否応なく毎晩というわけにはいかない。もっとも回数が少ない分、エドガー自身“数より質”を追求し、セリスもそれを分かった上で応えているのだが。
セリス自身は忙しさのこともあってあまり自覚していなかったが、
いやいや、それ故に彼女の心中に沈み込んでいた“背徳の香り”がその濃度を濃いものになろうとしていた。
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―――サウスフィガロ郊外
「―――お久しぶりです。お元気でしたか?」
「まぁ、セリ・・・王妃様こそお変わりなく、いえ以前よりお美しくなったようで」
「一言お知らせすれば良かったんですけど、私仰々しいのが好きではないので、今日はお忍びで気軽な気持ちで来ました」
「まあまあ、それはそれは」
「本当はエドガーも一緒に行きたいと言っていたのですけど、最近色々と忙しいですから・・・」
「国王陛下が忙しいのは当然のことですよ。むしろ私のような引退した者にお気を巡らしていただき、こうして王妃様だけでも来ていただけるでも光栄なことです」