Taste-8
ーーークチュウッ・・・・
独特の水音とともに、セリスの淡いピンク色の唇が丸い果実を含む様はどこか妖しさを醸し出してしまう。
無論セリス自身そんなことを意図したわけでないが、彼女の正面にいるカールにとっては全く違う様相を帯びてくる。
セリスは気づかなかったが、カールの瞳の中にセリスを女と見る欲望の色が浮かんでいた。
「ああ、美味しい・・・・ステーキとワインに冷えた果物なんてちょっとした贅沢ね」
料理に対する感想を述べるセリスの瞳は酔いが回ってきたのか、どこか潤んできたように思える。
セリスは無意識に上衣のボタンを上から幾つか外して胸元を露にする。
ほんのり赤みを帯びたセリスの白い胸の膨らみが外気に触れた。
「・・・いかがでしたか?私の料理は」
先程までの気楽な口調から一転して、やや固い口調に戻ったカールの変化に、
セリスは無論気づいてはいない。
「本当に素晴らしいわ、店も料理も貴方も」
「・・・・ありがとうございます、セリス様」
セリスは額に浮かんだ汗を右の掌で拭う。
熱を帯びてきた身体を冷ましたい気分になっていた。
「・・・ごめんなさい、少し風に当たってくるわ」
誰ともなしに独り言を口ずさみ腰を上げるセリスと、
釣られるように腰を上げてセリスに寄り添うカール。
当初のぎこちなさに逆戻り気味のカールと対照的に、セリスの方は相手に対する警戒心を完全に解いてしまっていた。
だからカールが窓辺に向かおうとするセリスの背中に密着しても気にならなかった。
だが、これがカールの中の抑制をも解き放ってしまう。
彼の右手が背後からセリスの胸元を掴み、
左手がセリスの下腹部へ差し込まれた時、
セリスは漸く酔いから覚め、自分が置かれた状況に気づいたのだった。