Taste-7
************
――――事前に下拵えしていたのか、それともカールの料理の腕が良いのか、
又はその両方かは分からなかったが、
カールが奥へ引っ込んで30分も経たないうちに、
カールがお盆の上にできたての料理を並べて現れた。
椅子に座って待ち受けるセリスの鼻孔を肉の焼ける臭いがくすぐり、
油の弾ける微かな音がセリスの耳に入ってくる。
窓の外には既に夜の帳が降りて、真っ暗になっていた。
「お待たせいたしました。ワインで味付けした牛ヒレのステーキとシーザーサラダ、そして当店秘蔵の貴腐ワイン、最後にデザートのマスカットとなります。
つたない腕ではありますが、どうぞご賞味ください」
「そんなに待っていないわ。こんなに短期間で・・・流石というしかないわね。早速いただくわ」
感嘆しきりのセリスだったが、湯気がたつ内にということで、ナイフとフォークを取った。
はじめは肉、次にサラダ、そしてライス、合間に貴腐ワイン(傍らで給侍してくれるカールがグラスについでくれたのだが)の順番で料理を口に運んでいったのだが、
空腹だったこともあり
とりわけ料理の味付けが濃厚に感じられ、口の中に飲み込むたびにセリスは目のを見開いた。
肉の柔らかさと染み込んだ肉汁とワインのハーモニー。
一見普通の料理の取り合わせだが、1つ1つの食材はしっかり吟味され、セリス自身食事が終わるまでは、目の前のカールに話しかけることもなく無言で食べることに没頭させるくらいの味を作り出していた。
「ふぅぅ・・・・・」
目の前の肉とサラダを全て平らげ、
特製の貴腐ワインを数回口にしたセリスは思わずため息をついていた。
料理の味については申し分ないのだが、やはりワインの効用がセリスに軽い倦怠をもたらしたようだ。
単なる吐息でさえ、どこか甘いものになっている。
いつしか身体は熱を帯び、心なしか汗ばんできている。
残っているのはデザードのマスカット。
セリスは一粒つまみ上げて口に含む。