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Betula grossa
【ラブコメ 官能小説】

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茉莉菜の日記......-9

8月28日
今日、亜梨紗を純に紹介した。純は同じような顔が並んでいる事に驚いていたが、それ以上に亜梨紗は驚いていた。それはそうだろう....初めて好きになった男の子が私の彼氏になっているんだから....それでも亜梨紗は謝る私に
「気にしなくてもいいのよ!彼が選んだのがアタシでなくて茉莉菜だっただけ......それだけよ......」
そう言ってくれた。でもね亜梨紗......私は亜梨紗と偽って純に近づいたの......ゴメン亜梨紗......本当にゴメン......



私への謝罪で溢れている茉莉菜の日記に、私はいたたまれなくなった。あの日、茉莉菜に言った言葉にウソはなかった。実際、選ぶのは純だし、先着順で好きになるわけじゃない事ぐらいわかっていたからだ。しかし、わかっていても簡単に納得出来なかったのも事実だ....茉莉菜が選ばれたのなら、もしかしたら私が......そう考えてしまったから......ウィーンへの留学を誘われた時、私は迷わず決断した....留学すると......叔母のようなピアニストになりたいという夢もあったのは事実だが、茉莉菜と仲良くしている純を見ているのが辛かったから....というのも事実だった....
(ゴメン茉莉菜....本当はアタシ....茉莉菜の事....少し妬んでいたよ....羨んでいたよ....でもね....幸せそうに微笑んでいる茉莉菜を失いたくなかったのも事実なんだ......)
茉莉菜の日記は純との楽しい想い出よりも私への謝罪で満ちていた......それにあの日の事も茉莉菜は気づいていた......
私は茉莉菜の日記を読み終えて決意した。純に全てを話そうと....もしかしたら話さなくてもすむんじゃないかと思っていたが、そんなわけにはいかなくなった......茉莉菜の日記を読んでしまったから....

私は純に電話した。
「明日、卒業式の後、逢えない?」
「ああ!いいよ!」
「じゃあ....純の学校の校門の所で待ってる....」
「うん!」
「それじゃ......」
用件だけ伝えて電話を切った。



「葛城君!笑美ちゃんが呼んでるわよ!」
卒業式が終わり、担任教師の言葉を聞いた後、クラスメートに別れを告げて教室を出た。といっても、大半は大学でまた一緒なのだが......教室を出た所で姫川さんが俺を呼びに来た。
「ん?わかった!」
笑美ちゃんの所に行くと
「卒業おめでとう!純兄ちゃん!」
笑美ちゃんは笑顔でそう言ってくれた。
「ありがとう!笑美ちゃん!」
俺も笑顔で応えると
「約束のモノなんだけど......」
笑美ちゃんは言いにくそうに話しだした。
「ああ....忘れてないよ!」
俺は約束したいた制服のベストを笑美ちゃんに渡した。
「ありがとう!純兄ちゃん!」
笑美ちゃんは大切そうに俺のベストを両手で抱え込んだ。
「葛城君?私のは?」
心配そうな顔で姫川さんが話しかけてきた。
「はい!姫川さん!」
姫川さんには、制服のカーディガンを渡した。
「ありがとう!葛城君!大切にするね!」
二人の顔を見ているとなんだか照れてしまって
「えっ?ありがとう......」
そんな言葉しか返せなかった。
「葛城!こんな所にいたのか!」
拓弥が近づいてきた。


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