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Betula grossa
【ラブコメ 官能小説】

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茉莉菜の日記......-7

「亜梨紗!ウィーンに行く準備は終わったの?明日、卒業式でしょ?」
純との電話が終わった時に姉が声をかけてきた。
「うん....元々卒業するとすぐにウィーンに戻るつもりだったから....」
「そう....で?純君には伝えたの?」
「うん....」
「そうか......遠距離恋愛になっちゃうけど....頑張ってね!亜梨紗達なら大丈夫だと思うけど....」
「ありがとう....」
正直言って、不安が全くないと言えばウソになるが、今は信じるしかなかった。お互いの気持ちを......
「あのね亜梨紗......これ......」
姉が小さな箱を差し出した。
「何?」
「茉莉菜から頼まれてたの......もしもの時は亜梨紗に渡してくれって......本当はもっと早くに渡すべきだったのかもしれないけど......ゴメン遅くなって......」
「ううん....気にしないで!」
「それじゃ....」
姉は箱を渡すと部屋を出て行った。箱を見るとしっかりと梱包されていて、箱の上に『亜梨紗へ』と書かれていた。箱の中には数冊のノートが入っていて、何気なく手に取ったノートを開くと、それは茉莉菜の日記だった。調べてみると最初の日付は高校一年の夏、最後は私がウィーンに旅立った高校二年の夏の終わりだった。



7月10日
今日、お見舞いに来てくれた亜梨紗の笑顔を久しぶりに見た。ピアノのコンクールで散々な結果に終わってから暫く笑顔を見せてくれた事なかったのに....気持ちが吹っ切れたのならいいんだけど....亜梨紗には私の分も頑張って欲しい....私が諦めたピアニストになるという夢を叶えて欲しい....亜梨紗に言うとプレッシャーになるといけないから言葉に出来ないけど....



7月11日
今日も亜梨紗が笑顔を見せてくれたので思い切って聞いてみた。
「何かいい事あったの?」
亜梨紗は最初
「別に....何もないよ!」
なんて言ってたけど、私がしつこく聞くと答えてくれた。
「昨日、病院で格好いい人を見かけたの!その人を今日も見かけたの!」
と....どうやら亜梨紗はその人に一目惚れしたみたいだ。今までピアノ一筋だった亜梨紗にとってたぶんこれが初恋....叔母さんはピアノの表現力を磨くためにも恋をしなさい!なんて言ってるけど....亜梨紗にとってプラスになってくれるといいのだけど....



7月17日
今日、亜梨紗が病室に入って来るなり
「聞いて!聞いて!今日、彼に話しかけられちゃった!」
嬉しそうな顔で話しかけてきた。
「何?何?詳しく聞かせて!」
私が興味深そうに聞くと、亜梨紗は嬉しそうに答えてくれた。亜梨紗の初恋の"彼"はケガをして入院していて、亜梨紗は"彼"の後をつけて行ってリハビリをしている"彼"を見ていたらしい。そんな亜梨紗に気づいた"彼"が話しかけてくれたそうだ。
「でっ?その後どうしだの?」
私が興味深そうに聞くと
「恥ずかしくて....逃げて来ちゃった....」
亜梨紗は真っ赤になって答えた。
「はぁ?何やってるのよ!せっかく"彼"が話しかけてくれたのに....」
「ゴメン......」
「アタシに謝ったってしょうがないでしょう!んもう....」
亜梨紗にこんなチャンスは滅多にないのだから無駄にしないように言っておいた。亜梨紗には幸せになってもらいたい....病気の私には手に入れられない幸せを....



茉莉菜の日記は私が純と出逢った頃から始まっていた......そう、純が最初に声をかけたのは私....茉莉菜じゃなくて私......




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