6.幽囚-12
また声を発して煽ってきた。罰とはつまり写真のことを言っているのだろう。だが、決して公にはしたくない過去を暴かれるという罰を免れるためにしては、あまりにも大きい辱めを強いられていた。悠花は垂らした腕の先で拳をグッと握り、ブーツの中でつま先に力を入れて身を硬くした。二度、鏡に映り込むギリギリで停められたから、どのあたりが見えてしまう境界か、予想ではなく感覚として分かっていた。さっきまで一旦停止していたスカートの裾は、今度は一度も止まらずにその境界を越えていった。
(……! っくっ……!)
鏡の中の悠花は、撮影のポージングでもよくある脚を左右に少し開いて立った体勢であり、自分で思うのもなんだが、プロモデルらしい美しい立ち方をしていた。しかし、長い脚の太ももは全て晒されている。そしてデニムミニの裾の奥から影の輪郭として浮かび上がってきた丸みが、さらに裾が引き上げられることによって蛍光灯の灯りによって色味を帯びてくる。出かける前に選んだ下着は、装飾も一切ない、シンプルな薄手のジャージ生地の紺色の下着だった。フィットネスに行くときやウォーキングに行く時に身に付けるもので、恋人の前で着るものではない。ただ恋人に見せる下着ではないとはいえ、あまりにも下品であったり格好悪いものは身につけたくなかったので、全体のデザインは水着に近く、前面は浅めの股上ながらウエストからのラインを強調し、バックの切れ込みも悠花の締まったヒップに相応しい、美しいラインを描いていた。
「ああっ……、み、見えたっ……、ぁぁ……」
嬉し泣きでもしそうなほどの声が聞こえる。鏡に反射して自分の下腹部に集中してきてくる視姦の視線を感じて、悠花は脚を閉じ合わせたい衝動にかられるが、耐えてじっとしているしかなかった。スカートをめくり終えるまであれだけ饒舌だった男は、言葉を発しなくなり、ただ耳元の髪へ鼻息か吐息かわからぬ熱い風を吹きかけてきているだけだった。無言の時間が過ぎるが、下腹部に感じる愚劣な視線は全く衰えなかった。
「ちょっとっ……、もういいでしょ? もう充分見たんじゃ――」
いったい何分間過ぎただろう。いい加減焦れて声をかけようとしたところで、
「んぐっ……! ファッ……、ホッ……、ふううっ……!」
背後から奇声が聞こえた。驚いて首を後ろに振り向けようとした瞬間、「うっぐあっ!!」と村本の雄叫びのような声が聞こえた。
次の瞬間、悠花の脚の間から何かが前方に向かって飛び出してきた。一瞬悠花は何のことかわからなかったが、目を落とした足元で、太ももの間にあの大きな亀頭が少し見えると、その先からものすごい勢いで噴射が行われているのが見えた。
「えっ! ちょっ! ……バカっ! やめてっ!」
何が起こっているか分かっても押しとどめる方法などなかった。
男は腰を落として背後から突き出し、悠花の脚の間に男茎を差し入れて堰を切っていた。コンドームで抑制していない射精を見たことがなかった悠花だったが、この男のそれが尋常でないことは、異常な光景から嫌でも伝わってきた。
亀頭の先から白い奔流が真っ直ぐに、まるで重力を無視するかのように前上方に噴き上がる。脈動する度に噴出された精液は2mは離れているはずの鏡の自分の頭の高さにまで飛び上がって、濃淡の粘液で分離しながら鏡の上を這って垂れ落ちていった。
(イヤッ……、なにコレ……。なんなのよっ、コレ……)
動いたら脚や服に付着してしまうかもしれない。身を固くしたまま、動けない状態で、思わず悠花は鏡から目を逸らし、瞳を閉じて横向きに俯いていた。