濡れた身体で雨宿り＜後編＞-9
「……美樹？」
「んっ だ、駄目だよっ ホントに抜け出せなくなっちゃうからっ あぁっ」
「抜け出す？どこに行くつもりだよ？」
「ど、どこって別にっ んっ 行く当てなんてないけどさ…… んんっ」
ちょっとした雨宿りのつもりだった。
でも、傘を借りればよかったのに、自ら足を踏み入れたのは私。
「俺、悪いけど離すつもりないからな？今日からおまえはもう俺の女だ！」
「……え？それって……あぁんっ やっ もうっ 訳わかんないよっ」
悠二の言葉と、太い指先が、私の中をグチャグチャに掻き回す。
離さないってどういうこと？俺の女って……私のこと？
ただもう一回したいだけじゃないの？それとも……
「せ、セフレになんて……絶対なってやらないんだからね？」
私は精一杯の虚勢を張りながら、悠二に唇を重ね舌を絡ませた。
「ああ？何言ってんだおまえ？俺以外のヤツに抱かせる訳ねぇだろが！」
そう言って胸をギュッと鷲掴むと、
持ち上げるように激しくそれを揉みしだく悠二。
悠二こそ何を言っているのだろう。
俺以外って、悠二以外の誰かに抱かれたいだなんて私は──。
「……ねぇ？どうして沙也加と別れたのよ？」
「ちょ、いまそれ聞くのかよっ」
「大事なことよ……答えて？」
「……じ、自信なさげで消極的な俺が……気に入らないんだとさ」
なるほどね、ちゃんと過去の経験を踏まえてるってわけだ。
私はなんだかそんな悠二が可愛く思えて笑ってしまった。
「わ、笑ってんじゃねぇよ！おまえこそっ なんで別れたんだよっ」
「私？私は……エッチが受け身すぎて……つまんないんだって」
「……はぁ？」
恋に恋い焦がれていたあの頃の私。
初めて出来た彼氏と夢にまで見た初体験──少女から女になった忘れられぬ日。
右も左もわからずされるがまま、
これでも随分と恥ずかしさに耐えていたんだけれど、
ただされるがままの私は、元彼にとってなんだか面白味が無かったみたい。
「アイツ……何様のつもりだ？」
「やっ 昔の話だよ？悠二が怒ることじゃないじゃん……」
眉間に皺を寄せ、見るからに怒りを露わにさせる悠二。
そんな顔もするんだ、なんて思ったりしながらも、
私なんかのことで怒ってくれてるのが、なんだか嬉しくてたまらなかった。