タンゴを踊る-1
タタンタタタンッ
駆け足で螺旋階段をくだるように
タンタンタタタンッ
狂ったステップを踏み続けるしかないんだ
タンタンタタタン
僕はもう、真っ赤なドレスから目をそらすことができないから
「なぁに考えてたの?」江里子さんはそう聞くと僕のジャケットからセブンスターを取り出した。
ホテル備え付けのそっけないライターで火をつける。
「いや、今日の江里子さんのタンゴも素敵だったなって」
「そぅ?」ふぅと煙を吐き出すといつものアンニュイな表情を浮かべた。長いまつげにふちどられた瞳。
「うん、やっぱり江里子さんが一番目立っていたよ。もう赤いドレスは着ないみたいだけど」
江里子さんは今ではシックなダークカラーのドレスしか着ない。微妙で繊細な色合いが江里子さんの大胆な踊りと妙にマッチしてセンスの良さを感じるけれど、昔に一度だけ着た赤いドレスはわすれられない。
あの時の燃えるような赤と江里子さんの真剣な表情、それは会場をも飲み込む一つの完全な芸術だった。
「もぅ似合わないわ。」江里子さんはそう言うと、とてもゆっくり煙を吐き出す。僕はキャミソール一枚のその姿とベッドに残るCHANELココの香りにやられてしまって、どうしようもない焦燥感にかられる。
「しよう?」
煙たい匂いののこる口に少し乱暴にキスする。ついさっきまでパールベージュの口紅が塗られていた江里子さんの唇。
「あぁ…早くすませなきゃ、子供のお迎え行かなきゃいけないのよ…」
「…わかったから…大丈夫だから」
そう耳元でささやいてあげてからキャミソールをまくりあげ乳房を揉む。少し張りを失っているけれど、寄せては引くあたたかな海のような寛容さがある。小さな乳首を口に含んで転がす。「ぁあ…」江里子さんがたまらないようにあえぎはじめた。
さらに舌と指を使って丁寧な愛撫を続ける。江里子さんの肌は陶器のように白くてきめが細かいので跡がつきやすい。
右手でそっと、江里子さんの秘部をなでる。
「ひゃぁ…ん」
江里子さんの鈴のような声。僕は体の裏をひっかかれたようにかきたてられる。
「もぅだめだよ…江里子さんを見てると、はりちぎれそうだ…」
「ぁたしもよ…お願い…もう、入れてぇ…」
俺はボクサーパンツから興奮しきったものをとりだす。手早くスキンをつけて一気に挿入する。突きあがる快感に声もでない。何秒間かつながったまま、息をするだけで精一杯だった。江里子さんは入れられたままひくひくと痙攣してるようにさえ見える。
結合している中は鑞がとけるように熱く、とろとろにとろけている。今にも吐き出しそうな欲望を抑えゆっくり、本当にゆっくり、動かし始める。
「ぁあぁ…ぁぁあ!」
江里子さんは本能の声をあらげ俺にしがみつく。シャンパン色に塗られた光る爪が俺の背中に深く食い込んでゆく。
一回、二回……深く深く挿入してすべてを壊してしまいたい。混濁した快楽の片隅で終わりを探すように体を動かす。
桜色にうっすら染まる江里子さんの裸体。蒸気ふきだすような熱気で俺を煽る。……ぐちゃぐちゃにして…なにもかも………それしかおれに残された終わりはないように思う。けれど、うねる子宮はさらに俺を迷い込ませる。ぺ○スを飲み込む膣。けれどそこに形はない。常に形を変えて人を惑わせる