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人狼少女は本能のまま恋をする 
【ファンタジー 官能小説】

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チェスター・バーグレイのこじらせた恋愛観念-4

***


 ―― そして七年後。

 アンと婚礼をあげた日の夜空には、星と綺麗な三日月が輝いていた。
 チェスターが幌馬車に入ると、黒髪の少女が弾かれたように顔をあげる。
 白い薄手の夜着をつけた少女は、七年間ですっかり成長した。小さかった身体はぐんと背が伸び、しなやかで敏捷な肢体は、若々しい生気と魅力に満ちている。
 前髪には七年前にチェスターが贈った星型のピンを、今もしっかりとつけていてくれた。
 しかし内面は変わらず、いつも元気で明るい少女なのだが、今のアンは見るからにガチガチに緊張していた。

「これから末永く宜しく。俺の花嫁さん」

 向かいに腰を降ろしてそう言うと、視線を泳がせたアンが、裏返った小声で呟く。

「えっ、あ……よろしく、おねがいします……」

 可愛いなぁと思いながら、チェスターはそっと手を伸ばして滑らかな頬に触れた。
 とたんにアンは、ビクンと身体を震えわせる。
 まるで、今からお仕置きをされるんじゃないかとビクビクしている子犬のようだ。

「……」

 チェスターは、にこやかな笑みを浮かべてアンを抱きしめた。

 余裕たっぷりなのは、あくまで表面上だけ。
 こっちとしても、色々と不安である。

 ひょっとしたらアンは、少し早まったと後悔してるんじゃないか、とか。
 せめて士官学校の卒業まで待って欲しかったんじゃないか、とか。
『やっぱり兄のようにしか見れない』と言われたらどうしよう、とか。

 ああ、だってほら、抱きしめて丁寧に愛撫を施せば、アンの身体は素直に快楽への反応は示すけれど、両腕でしっかりと顔を覆い、唇は拒否するように硬く引き結ばれているから。


 チェスター・バーグレイは、人が好きだ。

 とても興味深いし面白い。
 けれど自分の愛した少女を相手にすると、いつだってそこには不安が混ざる。
 それでも……

 ―― 悪いね。俺はもう、アンを離す気はないんだ。どんな手を使っても、アンが俺から離れられないように、身も心も堕としてみせるから。


 他にもっとアンの幸せになる道があったとしても、捕らえた人狼少女を逃してやる気はない。
 この七年間。
 年に数日間しか会えなくても、いつでもチェスターに駆け寄ってきてくれたアンを、もうそこまで愛しすぎてしまったのだから。
 どうやら自分は、人狼よりもずっと貪欲でタチの悪い捕食者だったようだ。

 俺も困ったもんだと、チェスターはひっそり苦笑する。
 そして、脅えるようにすくめられたアンの首筋に、そっと甘く喰らいついた。

 終


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