黒魔術師の妹の恋愛事情-2
彼女である麻里との関係も隠さなくなった真彦。眼鏡も掛けなくなり、後から聞いたのだが光輝いわく、最近人気急上昇中らしい。
「…一日くらい遊んでやれよ。高坂には黙っといてやる」
光輝はポンと真彦の肩を叩いた。
「恵子も可愛い方だから…」
小春は苦笑いで唯見ているだけだ。
「お前ら止めるという事を知らないのか?俺は知らない女と遊ぶ気は…」
「いいから二人でどっか行ってこいやぁ!!俺は小春ちゃんと先に帰ってるから。また明日な」
「え?あ、ちょっと…」
光輝に手を引っ張られ、小春は半ば強引にその場から立ち去る事になった。兄と友達を残したまま…。
「あの…良かったんですか?」
「何が?」
「お兄ちゃんをあのままにしといて…」
「大丈夫だよ。何とかなるって」
あの後、光輝と小春はしばらく走り、かなりの真彦達とはかなり距離が離れてしまっていた。
「でも、お兄ちゃん黒魔術出来るから光輝先輩を…」
「それは分かってるけどね。でもあいつがちょっと邪魔だったし、それは覚悟してるよ…」
「こ、光輝先輩?」
光輝が親友である真彦の事を邪魔だと言った事は今までただの一度も無かった事であり、突然の光輝の発言に小春は驚いていた。
「流石に好きな子の兄さんがいたんじゃ告白できないからな…」
「え?それって…」
「俺さ、小春ちゃんが好きなんだ。一人の女の子としてさ」
恥ずかしさのせいか、光輝の顔が少し赤くなっている。
「ずっと前から好きだったんだけどね。勇気が出せなくて言えなかった。こんなに近くに居たのにな」
「先輩…」
「海堂さんや天音さん…俺達の高校の代表的な美人さんだけどさ。あの二人に告白された時だって俺の心の中には小春ちゃんがいたんだ。今日だって何通もの手紙を貰ったけど、俺の中の小春ちゃんは大きくなる一方だった。俺は小春ちゃんの彼氏になりたい。小春ちゃんを守っていきたいんだ」
光輝はハッキリとそう言い切った。小春は感動のあまり身体が震えてきている。
「先輩…嬉しいです。私も光輝先輩が好きでしたから…」
「二人だけの時は光輝って呼んでくれよ」
「光輝!!」
小春は光輝に抱き付いていた。
「小春ちゃん…」
小春が気付いた時には、既に優しいキスが降ってきていた。
「光輝…大好き」
「俺もだよ。さぁ、行こうか」
二人は手を繋ぎ、そして共に歩き始めたのだった。
その夜。
「なぁ、今日光輝が何か言ってたのか?」
真彦が唐突に小春に尋ねた。
「光輝が……先輩がどうかしたの?」
「俺をわざと遠ざけてまでお前に話が有ったんじゃねぇの?でなきゃ麻里という彼女がいる俺に、知らない女と遊んでこいなんて言うわけないだろ?」
「…怒ってるの?」
「俺が怒ったら自分の身に災いが降りかかる事ぐらい、あいつはよく知ってるよ。それでも俺が居たらマズイ話だったって事なんだろ?」
何年友達やってると思ってんだと言わんばかりに、光輝は落ち着いている。
「んで、何言われたんだ?」
「…今言わなくちゃダメかな?」
「それは小春が結婚する時にでも聞けるって事かな?」
真彦が言った結婚という単語に、小春は顔を赤くして反応してしまった。
「はぁ…わかったよ。それより、さっきメールで麻里から聞いた話だけどな。光輝にはファンクラブが存在してるんだと。光輝の彼女になった女の子は大変だろうなぁ」
海堂や天音が光輝に告白した事がきっかけとなり、そのメンバーが一斉に行動を起こしたらしい事も真彦は呟いた。
「まぁ俺は『何も知らない』けどな」
そう言う真彦に、小春は少しだけ感謝したのだった。
後から聞いた話だが、真彦は恵子に偽名を使っていたらしく、あれ以来一度も会ってないそうだ。
「小春〜雪之丈さんのアド教えてよ〜!」
数日間、そう喚いて小春を困らせたという。
END