濡れた身体で雨宿り<前編>-1
ある初夏の夕暮れ。
私はクラスメイトであり仲の良い友人、悠二のお見舞いに来ていた。
「悪ぃな、わざわざ来てもらって……」
「気にしなくていいよ、どうせ帰り道だし!それより風邪、早く治しなよ?」
いつもは馬鹿みたいに元気なクセに、珍しく風邪で三日も学校を休んでいる悠二。
私が一番家が近いということで、
教師から頼まれたプリントを渡しに来たのだけれど……
「うん?ひょっとして雨、降ってきたんじゃねぇか?」
「あ、ホントだ……って、えぇっ!?」
悠二に言われ、ふと、空を見上げた瞬間、
まるでバケツをひっくり返したような突然の夕立。
いや、夕立なんて可愛いものじゃない。
これは俗に言われるゲリラ豪雨に匹敵するほどの大雨だ。
ピタリと素肌に張り付く制服、重くてずり落ちそうなスカート、
ふわふわに仕上げていた髪型は見事なまでにぺたぺたで、
自分をこんな表現するのもなんだが、
見る見るうちに、みすぼらしい濡れ鼠と化してしまった。
まるでコントのようにずぶ濡れ状態のまま、唖然として悠二を見る私。
幸い悠二は軒下にいたため濡れてはいないみたいだけれど、
あまりに突然の出来事に、すっかり言葉を失っているみたいだ。
「えと、ごめんっ 少し雨宿りさせてもらえるかな?」
「あ、ああ!とにかくあがれよ!」
そう言って私を玄関先に導くと、慌てた様子でタオルを取りに行く悠二。
見舞いに来ておいて迷惑を掛けてしまうのは忍びないが、
さすがにこのまま濡れて帰ると、私まで風邪を引いてしまいそうだ。
手渡されたバスタオルで髪を拭きながら、悠二に脱衣所へと案内される私。
濡れた制服をハンガーに掛け、差し出された悠二のシャツに袖を通すと、
なんだかいけないことをしているような気がして、
ほんのり頬を赤らめてしまった。
ちなみにシャワーを浴びるかとも聞かれたが、さすがにそれは遠慮させてもらった。
だって、いくら仲が良いとは言え、男子の家でシャワーを浴びるなんてのは……ねぇ?
「大丈夫か?寒くねぇか?」
「ん、大丈夫!それより悠二こそ風邪引いてるんだから……ゆっくり寝てなよ?」
とりあえず服が乾くまでと悠二の部屋に招かれたはいいが、
なんだかやけに気まずくて、思いのほかぎくしゃくしてしまう。
悠二もまた、ベッドに腰掛け平静を装ってはいるものの、
どこか目のやり場に困っているみたいだし……って、そりゃそうか?
だって私はいつもの制服を脱ぎ捨て、下着の上にシャツを羽織っているだけなのだ。
座り方ひとつ間違えるとパンツが見えちゃうし、
あまりシャツをフィットさせると、胸の先端が透けちゃいそうな格好なんだもの。