濡れた身体で雨宿り<前編>-9
両手は互いの背中を抱き締めながら、素肌をさらした下半身は擦れあい、
両足はもうほどけぬほどに、ぐちゃぐちゃに絡み合っている。
「言っとくけどな?べ、別に……手近な女に欲情してるわけじゃねぇぞ?」
ふと、そんな悠二の言葉が耳元で聞こえた。
今更なに言ってんだか。
「わ、私だって……誰でもいいほど軽い女じゃないわよ?」
身体の芯が焼けるように熱い。自分の身体じゃないみたいだ。
友達という関係だからだろうか?
それともこの少し異常なシチュエーションから?
理由なんてよくわからないけれど、
とにかく私の身体は、疼き止まぬほどに悠二を欲してやまない。
「雨、まだいっぱい降ってるよ?止みそうにないかも……」
「……みたいだな」
見つめ合ってはキスをして、そしてまた見つめ合うふたり。
焦らされてるのかな?
それとも私が勝手にひとりで焦れてるだけ?
うまく思考できないまま私は、何度となく悠二にキスを繰り返した。
元彼と付き合ったのはわずか半年。
初めての彼氏、初めてのキス、そして初めてのセックス。
惚れた腫れたを語っていた頃は、それなりに幸せだった気がしてたのに、
身体を合わせてからというもの、途端にぎくしゃくしたんだっけか……
求められるがままに我が身をさしだしていたあの日の私。
決して自分から求めるなんて事はせず、ただ、されるがままに抱かれていただけ。
女だからとか、はしたないとか、色んな理由があった気もするけれど、
そもそもがあの頃の私は、
セックスと呼ばれる行為に、随分と淡泊だったような気がする。
「ねぇ?焦らさないで、はやく傘……挿してよ……」
そう言って私は、悠二の堅い傘をギュッと握り締めた。
太いとか長いとか、そんなのもうどうでもいい。
クラスメイトとか仲の良い友人なんてのも、ホントもうどうでもいい。
雨が降ったら傘をさすように、
とにかく私は、悠二に抱かれたくてたまらなくなっていた。