濡れた身体で雨宿り<前編>-5
「あっ!?っと……」
「うん?どうかしたの?」
突然、悠二が驚いた様子の声を上げたかと思うと、
なんだか申し訳なさそうに視線を逸らした。
私はその視線を遡り、悠二が目にしていたであろう場所に目を落とすと、
頬が赤くなるのを感じながら、思わず布団で体を包み隠した。
「……エッチ!」
「ち、違っ!たまたま見えただけだっつーの!」
「……何が見えたのよ?」
「いやっ その……見えたって言っても谷間だけで…… ぐほっ」
私は悠二のお腹にパンチした。
「ひ、ひとり身になったからって……手近な女に欲情してんじゃないわよっ」
「ばっ!し、してねぇし!」
私はあははと笑いながら、ぽかぽかと悠二のお腹に繰り返しパンチを入れた。
見えないから手探りで、この辺りだろうと見当をつけながら……
「い、痛いって!馬鹿!ど、どこ殴ってんだよおまえはっ!」
「え?あ、ごめん?そんなに痛かった?」
私は慌てて手を引くと、申し訳なさから、
殴った場所を反射的に手の平で優しく撫ではじめた。
「お、おいっ!?」
「へ?どうしたの……?ここじゃなかった?」
ゆっくりと、悠二の腹部を私の右手がさする。
胸板と動揺にぼこぼこした腹筋、
でも、なんだが隆起しすぎているような、筋肉とは違う堅さと言うか……
「そ、そこはおまえ……」
「……え?あれ、もしかしてコレって……」
私は悠二の腹筋をギュッと握りしめると、
何の気無しに手を上下に動かした。
この独特の感触、随分と前に触れた事があったような、
これって多分アレだよね?その、お腹より少し下にある男性の……
私は右手でそれを握りしめたまま、思わず絶句してしまった。
すぐ手を離せばよかったものの、なんとなくそれも失礼な気がして、
そのまま惰性で手を動かしながら、
気がつけばまた、無意味な去勢を張ってしまっていた。
「ほ、ほらっ!やっぱ欲情してんじゃん?やだ、私ってばそんなに魅力的?」
「ば、馬鹿!そんなんじゃ……」
引くに引けなくなった私は、照れ隠しに必死で笑顔を作りながらも、
右手は変わらず悠二の陰茎を擦りあげていた。
クラスメイトであり仲の良い友人。
いや、もうそのくだりは言い飽きた。
そもそも、こんな格好でひとつのベッドに寝ているのだ。
抱き合いこそしてないが、とっくにその境界は越えてしまっている。