濡れた身体で雨宿り<前編>-3
「お、おいっ これはちょっと……まずくないか?」
「な、何がよっ!」
クラスメイトであり仲の良い友人。
そんな相手と、ベッドの上で背中合わせにひとつの布団をかぶるシチュエーション。
コレなんてエロゲ?
心の中でそんなくだらない事を考えながらも、必死で高鳴る鼓動を抑えている私。
おしりとおしりが当たってる。
スウェットを履いた悠二のおしりと、白い布切れ一枚の私のおしり。
なんの事は無い、ただ肉の塊同士が接触しているだけ。
なのに、どうしてこんなにもドキドキするのだろう。
「ね、ねぇ?そう言えば沙也加とはあれから上手くいってるの?」
「……え?ああ、ついこの前……別れたよ」
沙也加とは私の友人であり、悠二の彼女──だった子。
ここの所、上手くいっていないと二人から相談されていたけれど、
そうか、結局別れてしまったんだ。デリカシーの無い質問しちゃったな……
「ご、ごめん……知らなくてその……」
「バーカ!男日照りの美樹に心配されるほど落ちぶれちゃいねぇよ!」
「ひ、日照りって失礼じゃない!?ちょっと彼氏いない歴が更新してるだけよ?」
「ちょっとって、どれくらいだよ?」
「……い、一年と半年くらい?」
「ふーん、ちょっとねぇ……くくくっ」
くすくすと肩を竦めながら、必死で笑いを堪えている悠二。
前言撤回!デリカシーが無いのは悠二も負けてない。
でも、考えてみればあれから、もうそんなにも経つんだ。
初めての彼氏、初めてのキス、そして初めての……
あの時は、随分と自分が大人になったような気がしてたけれど、
一年半もひとりでいれば、確かに日照っても当然、
そりゃ、おしりが当たっただけでドキドキもするはずだ。
「はぁ……このまま私、ずっと彼氏が出来ないままかなぁ……」
「お、おいっ!冗談だろ?そんな気落ちすんなよっ」
私の言葉があまりに予想外だったのか、慌てた様子で私の方へと身体を向けるや、
肩に手をかけ、そっと私を自分の方へと振り向かせる悠二。
特に意味はなかったのだろう。何の気無しにただ振り向かせただけだろう。
けれど、私たちが今いるのは狭いシングルベッドの上なわけで、
その距離は、とっくに仲の良い友達の距離を超えてしまっているわけで……