これでいいんだ、これで……-1
日差しの強い中、私は、ハヤブサ並みのスピードで、向かってくるボールに、目をロック
オンさせ、打ち返していた。
「どうしたの!?ボールはまだまだあるわよ。」
部長が、目を吊り上げ、動きの鈍い私に喝を入れて。その言葉を耳にし、心の、緩んだ 帯を引き締め直し、腹から声を上げ、立ち上がったと見て、再び、緑のボールを軽く跳ねさせ、容赦無くラケットを振る。
「織原さん、気合入ってるね」
「幾ら団体戦が馬路かに迫っているからって何もあそこまで……」
隅っこで、同じウェアを身に纏った部員が、休憩をしつつ、言葉を漏らす。
「何か……可哀想だよね。」
そう口にした彼女は、私と同じクラスで、絆との仲、そして彼の病の噂を、薄々耳にし
無理をしていると悟り。
「ほんげぇーー、メラ疲れたどすえぇー」
キツイ練習を終え、目がグルグルマークとなり、その彼女を、ソファー代わりに、重い身を寄せ。
「お、織原さん……。」
そんな私に対し、腰を引き遠慮がちの様子。
「どったの?」
彼女の思いも知らず、酔っ払った中年顔で、顔を合わせると、少し間を置き、そっと私に言う。
「気をしっかりね、新しい彼氏何かすぐにでも出来るって。」
「む……。」
何か、カチンと来る言い草。悪気も無ければ嫌味でも無いのダガ、何処と無く。私は落ち込んでなど居ない、勝手に推理して励まされては良い迷惑だ、高校テニス大会で、是が非でもトロフィーを掲げたい、その為に練習に精が出ているだけだ、何が可笑しい?
別に、悲しく何て無い
絶望と言う名の黒煙を、必死に振り払ってる訳じゃ
そんな……事は。