泥棒シンデレラ-3
翌日、万優子は泣き腫らした顔が嫌だから午前の講義を休むと告げて、リビングのソファーでごろ寝をしながら、顔を美容シートで冷して笑ってた。
昨夜は部屋で沢山泣いたんだろう。それに加えて、きっと私を気遣い一人で大学へと行かせてくれたんだと悟った。
万優子は、本当に優しい子だから。
「万優子…、ありがとね…」
万優子は寝転んだまま私にヒラヒラと手をふり、
「舞子ー、ふぁいとー」
そう笑って送り出してくれた。
大学へ行く為に最寄り駅へ向かうと、改札で高科君が待っていて。
昨日の行為は、高科君にもすべてバレているのだろう。緊張した顔で小さく笑ってる事でそれがわかって、私も否応無しに緊張してしまい、俯いてしまった。
「…おはよう」
高科君に声をかけられ、
「…おはよう」
冷静なふりが上手く出来なくて、改札をくぐり抜け、歩く足が速まってしまった。
そんな私の腕を掴み、
「今日はちゃんと舞子だな…」
高科君は苦笑いして、
「…昨日、本当はお前が舞子だって気付いてた」
「嘘っ!?」
思いがけない告白に、仰天して足を止めてしまった私を抱き締めて、
「ごめんな…。気付かないふりしてた…。だって、気付いたら…、絶対に逃げられると思って…」
「…バカみたい。私、必死で万優子になってたのに…」
「それがわかってたから、余計に気付いてる事、言えなかった」
「…私が私だってわかってて…、あんな事…したの?」
「…だって、ずっと…舞子と…、ああいう事したいって思ってたから…。止める事できなくて」
「…今度はちゃんと、私の名前を呼んで…してくれる?」
高科君を見上げたら、
「舞子、これから、オレの部屋に行こう。昨日のやり直し…しよう」
そう言って、体の芯が痺れるような深くて濃厚なキスを私にくれた。