その3-3
「ええ!?」
予想をはるかに超えた質問に言葉が出なかった。
「大丈夫大丈夫、みんなにばらそうとかそういうつもりはないから。」
いたって普通の表情で話す誠。
「ど、どうしてそんなことを!?」
「わかるよ。だって…」
誠はズボンのウエスト部分に手をかけ、チラッと捲った。
「僕も穿いてるから。」
そう、そこから覗いたのは、黄色のショーツ。
男物とは違う、裾のところに装飾のようになっているのが見える。
「後ろから見てて判ったよ、まさか僕みたいな子がいるなんて思わなかったなー。」
どうやらクロッチのラインで気がついたらしい、今まで誰も気づいていなかったようだが、同士にはばればれだったようだ。
優は言葉を失った。
こんなことが起こるなんて奇跡に等しい。
誠は、小さいとき、女児向けのアニメがなぜか好きだった。
そのせいもあってか、そのアニメのショーツを欲しがって聞かず、母親を困らせたそうだ。
物心つくころ、母親は、そろそろ男の子用にしないかと言って聞かせたが、
それでも誠は断固として男の子用を穿きたがらなかった。
「幼稚園とか小学校で、その事でいじめられそうになったこともあった。でもさ、その時の先生がみんなに言ってくれたんだ、悪いことをしているわけじゃない、好きなことをすることはいいことだって。そしたら、みんなわかってくれた。」
優はその先生が言ったことは正しいのかよくわからなかった。
でも、少しだけ勇気をもらえた気がした。
「だから、僕はこの学校でも、堂々と女の子のパンツでいるよ。プールの時間とかで着替えがあっても平気だよ。」
はっきり言っていっていることはめちゃくちゃだったが、
なぜか優には、誠がかっこよく見えたような気がした。