喪服と薔薇-9
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―――それから10日後、
―――イスマス城
「ただいま!!今帰ったよ」
「おかえり、アル」
王都にいる姉ディアナと久方ぶりの再会を果たし、長らくイスマス城を留守にしていた若き城主アルベルトは、
城門の前の跳ね橋に黒いドレスを身にまとったシフの姿を目にするや、
パッと馬から飛び降りると少年時代そのままの笑顔で自分より背の高い妻の元に駆け寄った。
だが、
「久しぶりだったな、アルベルト。久しぶりの王都はどうだったか?」
「 !!! ナ、ナイトハルト陛下・・・・」
出迎えた年上妻に思わず抱きつこうとしたアルベルトは、
その後方から近づいてくる自らの主君の姿に思わず凍りつき、視線を反らせぬまま暫し言葉を失った。
「驚いたろう?ナイ・・・いや、陛下とは弔問先で出会っちゃってねぇ。巡視の途中だってことだったけど久しぶりにイスマスを見てみたいって言われてねぇ。
一緒に来てもらったのさ。
「そういうことだ。おかげで久しぶりにイスマス城を満喫させてもらったしな。
シフにも色々と面倒をかけた」
「やだよ、そんなの。かしこまらなくったって」
アルベルトの前で肩を並べて言葉を交わすシフとナイトハルト。
いつしか目の前にいる年下の夫抜きで軽口を叩き会う光景は、アルベルトにとってはある意味『異様』だった。
かつてナイトハルトと相性が合わないといって敬遠していたシフが、
今では頬を赤らめうっとりとした眼差しで『敬遠していた相手』と軽口を叩いているとは。