喪服と薔薇-10
そして姉ディアナと結婚してからも複数の愛人を持つという主君が、城主不在のイスマス城に城主夫人と1つ屋根の下にいたという厳然たる事実。
アルベルトは顔が青ざめ、全身血の気がひいていくのを感じていた。
そんなアルベルトを余所にナイトハルトはシフが事前に用意し、城の兵士が曳いてきた白馬を受けとると、ヒラリとその背に跨がった。
「では、またな。次に王都に来るときは、喪服でも構わんぞ」
意味深な言葉を発するや、次の瞬間にはナイトハルトはもう馬に鞭をあて風のように走り去っていった。
その背中を黙って見つめるシフとアルベルト。
だが呆然としているアルベルトとは対照的に、
シフは先程ナイトハルトが発した言葉を昨晩の自分の姿と重ね合わせていた。
最後の夜ということで、 それまでの夜とは趣を変えわざわざ喪服姿の自分を寝室に呼び、その姿のままベットの上で自分の白く豊満な肉体を味わい尽くしたナイトハルトのことを。
(・・・・本当に、癖になりそうだねぇ)
戦士でも妻でもない、
もう1人の自分を発見したシフの感慨深い呟きであった――――
――― 終 ――――