4.無知の罪、知の虚空-8
「はあっ……、ふうっ……、ぁぁ……、は、悠花ちゃんっ……」
村本は悠花の言葉で、体を溶けそうだった。もう我慢できなかったし、するつもりはない。ただただ、心地よさに身を任せたかった。
「言ったけど?」
「ふうっ……、カラダを自由にしていいんだね?」
「……あんたがそう言わせたんでしょ?」
「その、キレイな脚も、キレイなクビレも……、そうだよね?」
男の様子がおかしくなってきていることに内心怖くなりながらも、何とかしてこの状況を終わらせて外に出たかった。
「……そういうことじゃない?」
「そ、……その、エ、Fカップのオ、オッパイも、だよ、ね?」
「……」
「くふっ……、はあっ」
またコンドームの中で透明液が滴った。「だよね?」
「そうね」
さすがにそんな執着心を吐露されると、目を逸らさずにはいられなかった。
「はあっ……、あぁ……、は、悠花ちゃん。じゃ……、じゃあ……、じゃあ、出すよ?」
(……!)
目の前で射精される。そんな屈辱的な行為を予告されて、悠花が組んでいた腕をくずし、両手を口元に当てて顔を半分隠そうとすると、
「……ああっ……だめだよぉ? 顔を隠しちゃ。手を下ろして?」
「――」
大きくため息をついて仕方なく手を下ろし、太ももの上に置く。
「……サ、サングラス外して?」
「何でよ。イヤ」
村本にとっては悠花の全てがタイプであり、まさしく理想の女性だった。個々のパーツが自分好みな上に、それらが奇跡的とも言える配置で整っていると思っていた。
中でも特に大好きなのは瞳だった。アイラインの鮮やかなメイクの似合う、黒目が大きい涼しげな瞳は、カラーコンタクトでも入れればハーフに見紛うほどに印象的だ。
「は、早く……、外して? モタモタしていると、マ、マズいんでしょぉ……?」
もう一度大きなため息をついて、一旦俯いてサングラスを手に取ると、顔を上げながら外した。
「あふっ……!」
薄目の色味で瞳の影は見えるほどのサングラスではあったが、それが無くなると生身の悠花の瞳が、まっすぐ村本を見据えてきた。専属誌やグラビア、ネット上での画像でこちらを見つめられたあの瞳が、自分の股間を見つめているのだ……!
「はあっ……、い、いぐ……、め、目、逸らしたらダメだよ?」
「いいから、早く――」
「逸らしたら……、しゃ、写真、こ、公開、するか、ら……、うぐっ」
亀頭が大きく振れ、根元の方からせり上がっているのが動きで分かった。
「んふっ……! んふっ……!」
(……!)
村本も大きな声を出すわけにはいかないから、まるで動物のような押し殺したような声で、膝をガクッ、ガクッと痙攣させ、……待ちに待った射精を始めた。
悠花は精液溜まりの白い膨らみが、男茎が跳ねる度にどんどん大きくなっていく様を目の当たりにした。これまでの恋人には、コンドームの着用を必須にさせてきた。セックスが終わり、後始末をしているときに相手がコンドームを外しているところは見たことがある。
だがその時の様子とは異なり、今目の前にあるコンドームの先端は、垣間見てきた事後のコンドームの大きさよりも、数倍くらい大きく見えた。放出された中身がそれだけ多い、ということだ。
村本は尿道を凄まじい勢いで精液が通過していく感覚に、声も出せず全身を恍惚の電流に痺れさせていた。男茎が蕩けて、もげてしまうのではないかというほどの悦楽だった。
瀬尾悠花に――、その涼しげな瞳が軽蔑の視線を放つ前で、射精姿を見せつけるのは、想像していた以上の快楽だった。射精が収まっても、ガクン、ガクンと腰が前後に動くのが止められない。