Love or Like-3
「覚えとけよ、アホンダラァ〜！」
ガチャン
扉が閉まる。何でこんな人とデートしないといけないの、と実良が頭の中でずっと考えていた。きっと龍平も同じような事を考えているだろぉと実良は思った。
二人の間には隙間が出来ていた。春風が二人の隙間を遠慮なしに通り過ぎる。
この沈黙をどぉにかしたいと実良は思った。
そして、最初に口を開いたのは、龍平の方だった。
「二人になると緊張してまうな。何か話題あらへんの？」
龍平は緊張を紛らわすかのように煙草を口にくわえる。
「あ、火がない」
自分の体を探りながら龍平は言う。
「あぁ、どないしよ…」
ちょっと焦り気味の龍平。
「しょうがないなぁ〜ほれ火」
カチッと実良が火を出す。
「おぉ、スマンスマン！サンキューな！」
微笑んだ龍平の表情がどぉも愛らしい。さらさらの茶色いメッシュがかかった黒髪に、キリッとした輪郭に笑ったときに細くなる目。こんなに近くでそれもじっくりと見た事が無かった龍平の顔。思わず見とれてしまうくらいの綺麗な顔立ち。それに比べてアタシは化粧で隠してキレイを装っているんだ。なんだか女として恥ずかしくなってくる。実良は悲しくなる。
「おい！何か食おやぁ！腹減ったぁ」
龍平の言葉にハッとする。「あっ！いいけど、何処で食べる？」
「ラーメン屋！ラーメン食いたいねん！」
龍平の提案に賛成した実良はラーメン屋へと向かう。
「お前何食いたい？」
「アタシ？アタシはぁ―〜醤油ラーメンがいいな」
メニューをペラペラ捲りながら言う。
「じゃあ俺、味噌にしよぉっと。すんませーん！醤油一つと味噌一つください」
隣のおじさん達がうるさいせいか、龍平の声が聞き取りにくく、龍平は大きい声で注文した。
「隣のおっさん等、うるさいねん。静かにせぇや」
龍平はちょっとキレ気味だ。
「まぁまぁ。しかしおじさん多いなぁ〜」
実良は周りを見渡しながら言う。
「…思ったんやけど、お前関西弁ちゃうやん？何処のひとやねん」
「え？アタシ？アタシはぁ生まれも育ちも埼玉なの。埼玉からこっちに引っ越して来てぇ。近畿地方の高校に行くからこっちの方言にはまだ慣れてないから、関西弁はまだ喋れないの」
「ふぅ〜ん…周りが関西弁やったらキツくないの？」「ん〜そんな事ないよ」
龍平にずっと見られて実良は赤面してしまう。赤面したのを隠すように下を向く。何故だか、実良はドキドキしていた。
「おまたせしましたぁ」
二種類のラーメンが自分等の前に置かれる。
「うわ――！！美味そぉ――！！」
龍平は飛び付くようにラーメンに箸を入れた。子供のようにはしゃぐ龍平がなんだか愛おしくて仕方なかった。
「あっ、うめぇ！ヤベェ！」
「あ、ホントだ。美味しい！」
「トレードしよぉや！」
勝手に実良のラーメンと交換する。
「あぁ！これもうめぇ！」「ここのお店美味しいよ！」
「やな！また来ような！」
にこっと微笑む彼に彼女はいつしか彼の事が好きになっていた。
「今日はありがとう。楽しかった！皆には言っておいてね」
ペコッとお辞儀をする実良。
「おう！任しとけ！気いつけて帰れよ！なんなら送ろうか？」
「あ！いいって！ありがとう。じゃあね」
手を振って別れる二人。