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泥棒シンデレラ
【女性向け 官能小説】

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万優子と舞子-1

 姉の「万優子」という名前は、万物に優しい子になりますようにと祖父がつけた名前だと昔母から聞いた。
名前の通り、姉はとても心が広く優しい人だ。

 私の名前は「舞子」
舞うように軽やかに、しなやかに生きていけるようにと祖母がつけてくれたらしい。
残念だけど私は、舞うような軽やかさも、しなやかな強さもない。

 私達はたった数時間しか誕生日が違わない、所謂双子。一卵性だから、見た目は親でも間違えるくらいよく似てる。
だけど、性格は全く違う。
姉の万優子はみんなに愛される、明るくて人なつっこい性格で、誰にでも分け隔てなく優しい人。自慢の姉という言葉は万優子の為にあるんだろうなって、そう思う。

 そんな万優子とは逆に私は人見知りが酷くて、話す事がとても苦手で、人を避けるように目立たないようひっそりと生活をしている。
大学に入って半年以上が経った今でも彼氏なんて遠い夢で、友達と呼べる人すらいない。いつも一人だ。

 でもいいの。双子だからって、全てが同じなわけじゃないもの…。
万優子はきらきらとしたお日様が似合うとても素敵な人。私は地味な日陰がきっとちょうどいい。

 万優子と区別をつける為にかけた黒縁の眼鏡。
愛らしい彼女の笑顔に似合うミディアムショートの、明るいブラウンの髪とは対極の長い黒髪をひとつに縛り、万優子の好きなパステルカラーの女の子らしい洋服も避けて、私は黒やグレーの洋服を選んで着るようになった。

 別にいいの。私は…どうせ。

 万優子みたいに笑えない。
 万優子みたいに優しくなれない。
 万優子みたいに沢山の人から愛されない。


 羨ましい。

 本当は、私は、いつだって万優子になりたかった……。

 そう思う気持ちが日毎に膨らんでいったのは、万優子に彼氏が出来てからだ。

万優子の彼氏は同じ大学一年の高科秀明君。
本当は彼とは私のほうが少しだけ先に知り合っているけど、彼が好きな異性として選んだのは私ではない万優子だった。

 高科君は本当に素敵な人だ。こんな私にさえ毎日優しく笑って話しかけてくれるし、些細な私の変化に気遣い、心配の言葉をくれる唯一の人。
そんな高科君に対して、人見知りなはずの私は時々小さな悩みや愚痴をこぼしたり、思いがけず驚いて笑ったりしながら友達としての仲を深めていた


 同じ大学だけど、学部の違う万優子とは講義の教室が違う。だけど、学食は同じ。高科君と万優子が出会ったのは学食で私と万優子を間違えた事から始まった。

 …万優子に高科君を会わせたくなかった。
だってきっと、万優子は高科君を好きになる。
双子だからそれが嫌でもわかった。

 ずっとずっと、いつだってそう。
私が好きだと思う人を万優子も好きになる。
そして、みんな万優子の方に引き寄せられて行ってしまう。

 私はいつだって片想い。叶わない恋を諦めて、こんな私だから仕方ないんだと自分に言い聞かせてきた。

 だけど、高科君だけは諦められない。
万優子と付き合う事になっても、高科君は変わらず私に接してくれるもの。
同じ席の隣に座り、同じ講義を受けて他愛ない話しをしながら過ごす毎日は、私にとって大事な大事な時間で。

 何度も喉から「好き」って出かけた。
だけどきっとフラレるだろう、その後今の関係が壊れてしまうことがやっぱり怖い。
 だから告白なんて出来なくて。

 時々、高科君が家にきて万優子の部屋で時間を過ごす。
私はいつも高科君が来るときは万優子に外出をして欲しいと頼まれる。
理由はひとつだ。
高科君とセックスするから。
 
 今日も高科君が家に来ると万優子に言われた。
だけど、私は具合が悪いと言って、外出を断った。
万優子は私を心配してくれたけど、高科君を家に呼ぶ事は中止にはならなかった。
でも、私が隣の部屋にいるんだもの。セックスなんて出来ないでしょ…。

 そう思い、安堵してベッドに横になっていたら、高科君がきて。
 万優子の部屋のドアが開いて閉まり、二人が談笑する声が聞こえてきて。

 その数分後に、部屋が急に静かになって……。

 時折漏れる万優子の穢らわしい喘ぎを耳にして、悔しくて涙が溢れた。
 高科君の声がする。

「本当にいいのか? 舞子、具合悪くて寝てるんだろ?」

「ぁっ…ん…、いいの…っ、舞子は…きっと眠って…ぁあっ…っ!」

 …隣で喘がれたら眠れるわけがないじゃない。
頭から枕をかぶって、泣きながら悔しさに絶えてる自分が悲しかった。







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