コーヒの香り-2
海を見ながら二人の車は鎌倉に向かう。途中、朝食をファミレスで済ませ、砂浜に降りた。
「なんだか、夢みたい。幸せ過ぎ!」千恵ははしゃぎまくった。
「こんな暮らしが出来たら楽しいよね。千恵さんと一緒にいられたら・・・・・。」やはり彼の心に旦那の事が過ってしまう。
「あなたヤキモチやきなのね。それって、心が狭くなるからでしょ?失いたくないから?執着してしてるから?千恵は嬉しいけど、あなた辛くなっちゃうから、あなたは私の事好きにならなくていいよ。私はいつまでもあなたの事が好きだから。もう私はあなたの物だよ。心配しないで。約束する。」手をつないだ。海を眺めながら絵空事の幸せと、ゲロを履きそうな現実を感じていた。
「駆け落ちって辞書引くと「北へ」ってあるんだ。知ってた?どうして方角が決まってんだろう?」彼は千恵の頭を自分の肩に引き寄せた。
「へぇー、そうなの?北海道とかなのかな?駆け落ちかー、いいね、人生賭け切れたらそれはそれで幸せかもね。でも、あなたには似合わない。あなたはいつも正々堂々と生きてるから素敵。なんだっけ?イラスト、わたせ・・?わたせせいぞう。そう、わたせせいぞうのイラストを思い出す。あなたカッコいいよ、凄く。私も憧れちゃうけど、色が違い過ぎちゃうね。」
「千恵さん素敵ですよ。メチャクチャ美人だし、色なんて関係ないよ。」
「いいなー。そんな生活。」千恵は呟いた。そしてしばらくの時を狭い狭い二人だけの空間に浸っていた。波の音だけが繰り返し二人を包んでいた。
「初詣で渋滞だね。折角鎌倉に来たのに、これじゃ駐車場探すのも大変かも。」鎌倉は賑わっていた。
「いいよ、ずっと車の中で、この車好きよ。落ち着く。」バンデンプラスは渋滞の中を走る。時々、珍しさに車をジロジロ見る通行人もいた。結局、車窓から鎌倉を見物するだけになってしまった。
小夜子からメールが届いた。箱根のコテージを予約出来たようであった。
「今日、箱根に泊まらない?泊まるところ予約出来たんだけど。」
「いいよ、さすがに徹夜は疲れるね。温泉が有ったら最高だね。」車は来た道を戻り、箱根に向かった。途中、路面電車を千恵は「ちんちん電車」と言って、二人の話しは盛り上がった。