冬の記憶-1
月曜日、今日もあの高校生は窓を開けた部屋でオナニーをしていた。千恵は隠れながら見て、ひっそりと楽しんでいた。珍しく朝から仕事で旦那はいなかった。「あの子、彼女いないのかなー?クーラーもつけずに暑くないのかな?」高校生を見て三年前の出来事を思い出していた。
千恵には不倫の彼氏がいた。不倫と言っても彼氏は独身だった。その彼は交通事故で両手にギブスをはめたまま会社の宴会に来て、コンパニオンだった千恵と出会った。見るからに誠実そうで、涼しげな雰囲気を醸し出す男性で、珍しく一目で千恵は気を取られた。
「おにいさん事故に遭ったかなんか?大丈夫?お酒も飲めないんじゃない?」それが千恵からの一言目だった。
「そーなんだよ。こいつポキポキって両手骨折しちゃって、なーんにも出来ないの!仕事もできなきゃ、せんずりも出来ねーの。千恵ちゃんこっちおいで、こいつじゃオマンコ触ってくんねーよ。」上司が割って入って来た。
「なーんだ、それじゃあ、お姉さんが乗っかって、セックスしてやろうか?触れなきゃ、舐めてもらうかなー?」上司のオヤジに千恵が返した。
「おー、千恵ちゃん今日もイケイケだねー!」さらに上司が口を挟む。
「ほら、箱ごとティッシュあげるから、トイレ行っておいで。」上司を追い払い、コップにビールを注いだ。彼の横に座って千恵はビールを飲ませた。
「すみません。ありがとうございます。」やはり誠実そうな彼がいた。
「あんた良い子だねー。すぐわかる。私見る目あるんだ。」千恵は真顔で話しをした。話しは続いた。
「へー、そうなんだ。」話しが進むにつれ、千恵は彼に好意を抱いた。そして、話しの流れから彼が八歳年下で彼女のいない童貞である事を察した。誠実さ謙虚さ、すべてが千恵の心をつかんだ。そして千恵は彼を自分の男にしたくなってしまった。
本気の千恵は決して下ネタで近寄らず、彼の話しに耳を傾けた。
「じゃあ、おにいさん事故って言うより災難だったのね。これからきっと良い事あるよ。」彼が身の上を話すと全てをポジティブに相槌を打った。
宴会も時間が経ち、酔いつぶれる者が多く出て来た。千恵を含むコンパニオンも、もう時間の延長はしない。いよいよ、千恵がアクションをおこす。
「おにいさんも泊まるの?」
「ええ、明日皆より一足先に帰りますが。」
「何かご用事があるの?」
「いいえ、お風呂も入れないから皆に迷惑かけそうで。」
千恵は彼にお冷やを注いだ。
「気をつけてね。」メモを渡し、笑顔で宴会をあとにした。
翌朝、千恵の携帯が鳴る。彼からだった。
「もしもし、千恵さん?昨日はありがとうございました。メモに”明日の朝電話必ず”って書いてあったから。」
「こっちこそお世話になりました。旅館の女将に話ししてあるから、お風呂入ってください。手伝ってくれますよ。皆さんで楽しんでくださいね。」それだけの電話だった。が、彼と千恵の距離は一気に縮まった。
そして午後に千恵の携帯が再度鳴った。
「千恵さん、こんにちは、あのー、なんなんですけど、お世話になっちゃたからお土産買ってきました。送りたいんですけど、どちらに送れば良いですか。」しっかり彼は千恵の術に捕まったようであった。