冬の記憶-2
翌日の夜、千恵は彼の家にお土産を受け取りに行く事にした。木枯らしが吹く夜だった。
「こんばんは。来ちゃいました。」
「どうぞあがって、寒いでしょ。」
「いや、ここで大丈夫よ。」フォックスファーのコートの襟からアゴを出して答えた。
「そんな事言わないで、誰も居ないし、散らかってるけど、どうぞどうぞ。」
「それじゃ。」玄関でハイヒールのパンプスを揃え彼の部屋に上がる。きちんと整理されているはずの部屋は散らかりはじめていた。1LDKの程よい広さは二人の空間を演出してくれた。千恵がコートを脱ぐと彼はギブスの手でどうにかハンガーを取ってくれた。千恵の目に散らかったキッチンが映った。
「あっ、ありがとう。ギブスは大変でしょう?洗い物してあげるね。」
「いや、大丈夫ですよ、平気です・・・・すみません。」彼の言葉より千恵が早くキッチンへ行くと蛇口をひねっていた。
「ねえ、入り口の車あなたの?珍しい車よね?」手際よく片付けをしながら千恵は聞いた。
「バンデンプラスです。イギリスの車、古い車なんですけど父から譲り受けて乗ってるんです。」
「へぇー、お父様もお洒落なのね。良いじゃない、あなたに似合ってる。」千恵は全てを褒めた。いや、千恵が本当に彼を気に入っていた。「なんだろ、品があるのかな?食器もセンスが良いのよね。うんうん。」こんな素敵な人になんで彼女がいないのか不思議に思えた。
「確か信州の出身って言ってたわよね?良い場所?」千恵は彼のガードを崩そうとした。
「長野の千曲です。何もない田舎ですよ、あんずの里って知ってます?」彼もキッチンへ移動した。
「聞いた事あるけど、行った事ないなー。」二十一歳であの旦那と結婚をし、旅行など連れて行ってもらった事がない。千恵は現実に厳なりした。顔が陰る。
「今度行きますか?骨折が治ったら、バンプラに乗って行きましょうよ!4月が良いですよ。あんずの花が咲きます。一緒に行きましょうよ。」彼はテンションをあげた。
「優しいのね。ありがとう!ねぇ、洗濯物は大丈夫?出来るの?」千恵は笑顔を作った。
「いや、、、全然です。」
「明日してあげるね。鍵貸しといて。」自然な会話が彼のガードを崩していった。
「えっ、鍵を?千恵さん大丈夫なんですか?千恵さんって彼氏とか居ないんですか?」いよいよ彼のガードは崩れはじめた、彼の胸はドキドキと鼓動した始めた。
「私?私、旦那居るわよ。結婚してるよ。」平然と千恵は答える。
「え、そうなんですか。ご主人がいるんですか。」突然の情報に彼の心臓は震えだした。彼の平常心は壊された。心が乱れる。大きく深呼吸をした。
「あなたはどうして彼女作らないの?」千恵が切り込む。
「なんていうか、いつの間にか今日まで来ちゃって、、、千恵さん家庭がある、、の、、、」声が軽く震えた。
「ねえ、じゃあ、今度あなたの童貞を私にちょうだい?この人妻に筆おろしさせて?」千恵がいきなり直球を投げた。
「ええっ、千恵さん。」顔を赤くして彼は照れた。
「今度ね!今日は帰らなくちゃ。」千恵はそう言って、彼の股間を叩いた。膨らみを感じた。
「あっ。」わずかなリアクションだったが、呆然としている彼がかわいく見えた。
「うぶネ。我慢出来るの?」怪しい笑みを浮かべ千恵は聞く。
「・・・・・・」
「もう。ごめんなさいね。刺激しちゃったよね。」千恵は謝ると、ズボンの上から彼のペニスを触った。みるみる硬くなるペニスを指ではさみ優しくしごいた。
「千恵さん、、。」
「いいよ、このまま出しちゃっても。明日パンツ洗ってあげるから。」人妻の本領発揮だろうか、千恵の手淫テクニックは抜群で、彼は恍惚の快感に襲われていた。
「千恵さん。駄目です、、あーっ。」彼はパンツの中に射精した。千恵は彼の脈に合わせ、絞り出すかの様にズボンの上からペニスを摘んだ指に強弱を付け、ゆっくり大きく上下に動かした。そっと彼の口に唇をつける。頬を這わせ、耳元にチュッとキスをした。
「ごめんね。悪い女よね。あなたの事、汚しちゃいそうよね。」ティッシュの箱を探し、彼をソファーに座らせ、パンツをしまっている場所を聞く。持って来ると、彼のズボンとパンツを脱がせて、むき出しになったペニスに意識もせずティッシュで綺麗に拭て、またパンツとズボンを履かせた。千恵にとっては、無意識に出来てしまう行動が彼の心を掻き乱していった。彼は悩んだ、千恵のそばにいれば絶対に苦しい思いをする。だが、先ほどの恍惚の快感が身体に尾を引く。結局は身体が正直だった訳で、彼は千恵に鍵を預けた。
それから二日置きに千恵は彼の部屋を片付けに行った。彼が仕事に行っている昼間の時間だった。二人の親密な関係は逢わなくても深まっていった。