繁殖-2
「アタシもゼインもスランが好き。スランはアタシ達2人が好き……アイツの恋愛感情ってチョット壊れてんのよねぇ〜」
カリーはスランに文句を言いつつも、愛しそうに自分のお腹を擦った。
まだ目立たないが、微かにふっくらしている腹部を擦るカリーは、とても幸せそうに見える。
「……ゼインは何て?」
自分の恋人に種付けされたら胸中穏やかでは無いだろうに、彼はカリーをファンの城に預けて、とある王子様の護衛の仕事を続けている。
「ムカつくぐらい喜んでるよぉ?大好きな男と大好きな女の子だからねぇ〜…ゼインも大概変な恋愛感情よね」
寛大なのか何なのか……これがキャラのダンナだったらブチ切れて国がひとつかふたつ滅ぶかもしれない。
「カリーは、どうなのさ?」
もし、自分がカリーの立場だったら絶対に産まない。
ダンナ……アース以外の男の子供は産みたくない。
「ふふっ……キャラだけに言うけどぉ〜」
カリーの表情がふにゃふにゃに崩れる。
「実は、スッゴい嬉しいんだぁ♪」
ゼインが1番好きなのは今も昔も変わらない。
それでも、スランの子を宿した事はカリーにとって物凄く予想外に嬉しい事だった。
「アタシの人生で子供作るなんてあり得ない話だったし、ゼイン以外の種なんていらないけど、そもそもゼインに種無いしね」
暗殺者として生きて、沢山の命を奪って……そんな自分が、血にまみれた手で無垢な赤ちゃんを抱くなど、想像しただけで吐き気がする。
「それでも、外出しだったにも関わらず子供が出来たって事はさ〜何か意味があると思うんだよねぇ〜よく分かんないケドさ」
ゼインが言っていた……意味が無いモノなんて無いと、全てが繋がって世界が出来ているんだと。
「それにね?スランの子ならアタシの血まみれの手で抱いても穢れないかなぁ〜ってさ」
父親も血まみれなのだから、母親が血まみれでも構わないような気がした。
「そもそも、赤ちゃんは血まみれで産まれますわよ。それに外出しは避妊にはなりませんわ」
その会話に割り込んだ穏やかな声の主は、ファンの巫女長ミヤ。
「姫様、はしたないですわよ。キチンと服装を正して、椅子にお座り下さい」
穏やかな口調なのに冷ややかな空気が流れ、ブルッと身を震わせたキャラは慌てて立ち上がり言われた通りにした。