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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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3.滑落-12

「ああ、そう? ……こっちの時計が壊れてるのかもしれないね」
 村本に空っトボけられて、悠花はカッとなった。
「でもまあ、3分後でも答えは変わらないでしょ?」
「……会わないって言ったらどうするの?」
 さっき押し込めた考えが、悠花自身気づかない間に頭をもたげ始めた。
「メールに書いたとおり、さ。明日には、は、悠花ちゃんにも、事務所にも、問い合わせが殺到すると思うよ。それにブログも荒れるだろうね」
「そんなことして楽しい?」
「もちろん楽しくはないよ。でも悠花ちゃんに会えないんじゃ、仕方がないか、って思うね」
「何が仕方がないよ、意味わかんないんだけど……!」
 語気が荒ぶる。男が写真を削除すれば済むことだ。
「ふ、ふふ……」
 芝居ではない。あの瀬尾悠花が、自分の脅迫にたじろぎ、自分の脅迫に苛立っている。つまり悠花を支配している。そう思うと、村本は自然と笑みがこぼれた。
「さぁて、どうする? 会う? 会わない?」
「……会うっていっても、普通じゃないんでしょ?」
「普通じゃない、って変な言い方だね。ただ会うだけじゃないよ、っていうのはメールに書いたとおりだけどね。……い、い、言ってる意味、分かるよね? ……悠花ちゃんだって、もう、オトナなんだし、状況的にね。この意味」
「さぁ? 会う以上に何があるのかわからないんだけど。サインか記念写メでも欲しい? だいたい――」
「エッチだよ、エッチ。……セ、セックス。悠花ちゃんが会いに来てくれたら、悠花ちゃんとエッチしたいと思ってる」
 悠花の発言を待たず、村本は割りこむように、悠花がずっと避けてきたその言葉を口にした。
「ちょ……」
「俺は悠花ちゃんの、大ファンだからね。いつも悠花ちゃんをオカズにしてしてるんだ。頭の中で――」
「やめて」
「悠花ちゃんのカラダを思う存分、いっ、……ぱいイヤラしいことしたいと思ってる。毎日オナニーしながら頭の中で妄想してるプレイでね――」
「ほんと、黙って?」
「悠花ちゃん、……どうするんだい? 俺とエッチするために会いに来てくれるかい? そろそろ時間だよ」
 一方的に話された上に、最後通牒を突きつけられて、悠花は黙りこんだ。「抱く」と言っている相手に、しかも自分に対して恐ろしいことの執着を持っている男に対して、明示的に承諾をするなんて、恐怖とプライドが容易にはさせなかった。
「そんなふうに脅迫しなきゃ、女とできないんだ? きっと全然相手にされてないんだね」
「ああ、それはそうだよ」あっさり男は認める。「風俗以外ではてんで相手にされないな。ましてや悠花ちゃんみたいな子、脅迫でもしなきゃエッチするなんて一生無理だからね」
「そう、女に慣れていないんだ。じゃ、どうせ……」
 こんな売女のようなことを言っていいのだろうか、と一瞬躊躇したが、「大したことないんでしょ?」
「それは悠花ちゃんが直接確かめたらぁ?」
「……キモッ」
 演技をしつつも、やはりこんな男と会話すると最後に本心が漏れ出てしまう。
(もうイヤ……何なのコイツ)
 もともと寝不足であることも相俟って、疲労はピークに達していた。
 こんなキモい男、女に慣れていないに違いない。拒み続ければ、明日もこんな問答をしなければならないかもしれない。一度だけ、相手してやればこの苦痛から解放される。どうせ、きっとすぐ終わる――、少しの間だけ我慢すれば……。
「どうしろっていうの?」
 思わず口にしてしまっていた。
「それは、つまり、会ってくれる、ってこと?」
「……だから、どこで会うの、ってこと」
「会ってくれるんだ、……ぐっ……!」


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