再びタップレアの祭りへ-1
パクシーが消えたときサンダも飛んだ。虹色の空間の中ですぐにあの袋小路の世界が広がった。そしてサンダは建物の屋根の上に降りていた。
「消えたと思ったら、また現れたな。パクシーだ。捕まえろ」
ユアロクが叫んだ。するとパクシーはその場所から跳びあがった。ユアロクの頭上を越えて、他の若者たちの背後に着地したのだ。
「と……飛びやがった。 本当にこいつはパクシーだ」
パクシー走った。若者たちは追いかけるがどんどん引き離されて行く。サンダは屋根の上を走ってその様子を追跡して行った。
行く手を別のグループが立ちふさがったが、その頭上をまたしても跳び越えてやり過ごす。そして遂には、サンダのように屋根に跳び上がって、その上を走った。
「パクシーだ」「屋根の上だぞ」「追い詰めろ」
様々な声が飛び交うが、パクシーは笑って小さな声で言った。
「パクシーじゃないよ、私は。マルティよ、でしょ?」
マルティはサンダの方を見て言った。
「サンダって言うのね。いつかまた会えるね。楽しみにしてるわ、ありがとう」
サンダは大きく頷くとジャンプして虹色の空間に飛び込んだ。
「さあ、僕は部屋に戻って、お婆ちゃんに言うんだ。お婆ちゃん、僕のこと覚えてる?って。16歳のときに会ったよね。そしてお婆ちゃんの足を速くしてやった。
それが88歳の誕生日のプレゼントだよって」