タップレアの祭り-1
サンダはマルティお婆ちゃんの誕生日になって、初めて時空を旅することにした。伯父さんや伯母さんや従兄弟たちが来始めたので、自分の部屋に入って時の旅をすることにしたのだ。
「僕のマルティお婆ちゃんが16才のときのタップレアの祭りに行きたい」
サンダはそう願ってしまったのだ。そう願うことがどんな結末になるかということも知らずに。
そして、目の前の空間にグルグル廻っていた無数の世界が次々に消えて、たった1つの世界が大きく広がって行った。
夜だった。灰色の石畳の道が縦横無尽に走る石造りの建物の町並み。町の到る所に松明が置かれて暗い路面を照らしている。
だが何処からか騒がしい声が聞こえて来る。サンダは路上に立っていた。
そのとき通りの向こうから1人の少女が走って来た。身なりはとても粗末である。まるでボロ雑巾に包まれたような格好だ。そして奇声と入り乱れた足跡が追いかけて来た。
少女は石造りの建物の木製のドアを叩いた。
「お願い、開けて!」
だが、どのドアも内側から固く閉ざされていた。
少女はサンダから見れば大人の女性に見えるが、実際は15・6才くらいだろう。その少女はサンダを見て一瞬びくりとするが、傍を通り抜けてまた走り出した。
だが後方からも前方からも人影が現れた。若い男達だ。しかも身なりがとても良い。男たちは少女に襲いかかった。
それから先はサンダには信じられない光景が展開した。少女は手足を押さえられ、路面に押し付けられて悲鳴を上げた。
サンダは建物の冷たい壁に背をつけて目を見開いた。少女の衣服は捲り上げられ、男が覆い被さって体を揺すっている。
少女のうめき声と男の激しい息遣い。周りの男の笑い声や。なにやら下品な言葉が交錯していた。
覆い被さっていた男は立ち上がり、別な男が少女の上に被さる。そして他の者に言って、少女の体を持ち上げさせたり、足を大きく広げさせたりして、体をぶつけるようにして激しく腰を動かす。
少女の声は次第に力なくなって抵抗する力もなくなった感じになる。
「ちぇっ、つまらねえ。俺はもう行くぜ」
一人の青年がそう言うとその場所から離れた。他の者がその彼に呼びかける。
「ユアロク、なんでやっていかないんだ。」
ユアロクと呼ばれた男はその場を去りながら言った。
「俺の狙いはパクシーさ。 アチュートの娘なのにものすごい上玉だろう」
「ああ、どこかの馬鹿なサンパーントの男が求愛して仲間に殺されたって、例の女か。
だが、あいつを捕まえようとして追いかけたけれど誰も追いつけなかったって言うぜ」
その言葉にユアロクがにやりと笑った。
「だから、このタップレアの祭りで捕まえるんだよ。100人近くのサンパーントの男がこの町を狩って廻ってるんだ。
それこそパクシーを追い詰めるのには絶好のチャンスじゃないか。」
「ちぇっ、もうこの女ぐったりしちゃったぜ。つまんねえ。それじゃあパクシー狙いで行こうとするか」
若者たちは路上に少女を置き去りにして、走り去った。サンダは倒れている少女のそばに駆け寄り捲くれ上がった衣服を元通りに直してやった。
そのときに少女の股間から白いどろどろとした液が流れ出て、そこに血が混じっているのを見た。見てはいけないものを見たような気がしてサンダは忘れようとした。
「ねえ、お姉さん。しっかり。僕聞きたいことがあるんだ。マルティって女の人知ってる?
ちょうど今16歳で、足が速くって、顔は僕に似てるんだけど」
その少女は微かに首を振った。そして薄目を開けてサンダを見た。そのとき驚いて何かを言おうとした。
「なに? 何を言おうとしてるの?」
「パ……パク……シー」
それだけ言うと少女は目を閉じた。 サンダは辺りを見回した。マルティを捜さなきゃ! でもパクシーという子が何かを知ってるのかもしれない。