お婆ちゃんへのプレゼント-1
僕の名前はサンダ。僕はマルティお婆ちゃんが大好きだ。
本当は曾祖母ちゃんなんだけれど、お祖母ちゃんはお母さんのビッティを生んだとき産後の病気で死んでしまった。だから僕らはマルティ曾祖母ちゃんを、お婆ちゃんと言ってるんだ。
僕の顔はお母さんには似てないけれどお婆ちゃんにそっくりなんだ。お婆ちゃんは若いときとっても足が速かったって言ってた。僕もとっても足が速いんだ。
お婆ちゃんは僕をとても可愛がってくれる。で僕はお婆ちゃんの88歳の誕生日が近いので何かプレゼントをしたいと思ったんだ。
そしてマルティお婆ちゃんに聞いた。お婆ちゃん、何かほしいものある?ってね。そしたらマルティお婆ちゃんは顔中皺だらけにして笑ったんだ。
「サンダや。私には欲しいものなんてなにもないよ。私にはお前たちがいてくれるだけで幸せさ。そりゃあ、もっと若い頃だったらほしいものが色々あったろうがね」
そこで僕は聞いたんだ。じゃあ、もし昔に戻ったら何が欲しいと思うのって。
するとお婆ちゃんは遠くを眺めるような目つきをして真剣に考え始めた。その顔つきを見てると、頭の中で色々な物が行ったり来たりして浮かんでいるのが分かるような気がした。でも、とうとう何かを思い出したらしく、真剣な顔になった。僕はマルティお婆ちゃんのあんな顔を見たのは初めてだった。
「そうだね。たった一つ。昔私が娘だった頃……足がもっと速ければ良かったって思ったことがあったよ」
僕はえっ?と思ったよ。だって、お婆ちゃんは足が速いのが自慢だったって言ってたじゃない。
「そうだよ。でも私が16才のときのタップレヤの祭りの晩、もう少し足が速ければ良かったのにと思ったことがあったんだよ。」
「その祭りこの辺の祭りなの? 聞いたことがないなあ」
「それもその筈さ。あんたのお祖母ちゃんが3才の時にこっちに引っ越してきたからね」
「では、その前はどこにいたの」
そうするとマルティお婆ちゃんはニコニコして黙ってしまった。きっと言いたくないんだと思った。
だから僕は決心したんだ。お婆ちゃんへのプレゼントはこれにしようってね。