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この気持ちを言葉に代えるなら
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この気持ちを言葉に代えるなら-1

「ねぇねぇ、一人?ちょっと付き合ってよ」

そんなふうに言葉をかけてくる奴らに「興味ない」とだけ言い放って私はこのごみごみした夕暮れの街を進んでいく。
学校でも街でもこの始末。
しつこく迫ってくる輩に声をかけられるのはかなり頻繁にあることだった。
本当にため息が出る。
私はどうやら顔もスタイルも悪くないらしい。
まぁ名前が名前だけにある程度の容貌を持っていて良かったとは思うが。
名前負けなんて言われたくない。

「せめて女子高にするべきだったな・・・」

はぁ、とため息をつきながら家の鍵を開けようと鍵穴にそれをさした。
カチャン。
と、音がするはずのそのドアからはそんな音は聞こえなくて私はしばし考える。
窓からは明かりが漏れ、なんといい匂いがしている。
・・・と、いうことは・・・

「・・・ユキ?」

そう問いかけて私はドアを開けた。

「おー、美桜(みお)おかえり」

そう言ってユキは微笑みかける。
ユキのエプロン姿を見て「また作ってくれたのか?」と、聞くとユキは「おう、一緒に食べようか」と言って再びキッチンへ戻っていった。
本当にユキは面倒見がいい。
「着替えておいで」と言うユキの声に私は「はぁい」とだけ言って自室へと入った。
ユキが私の面倒を見るようになって3年。
私の両親が他界して以来のことだ。
私に兄弟は居なかった。
しかし伯父や叔母は居た。
そこを転々としていたが、結局は中学卒業を機に親戚たちの援助で一人暮らしをしている。
どうしても私は叔母や伯父の家族に馴染むことが出来なかった。
私は伯父や叔母に気を使って。
そして伯父と叔母も私に気を使った。
支援をしてくれている伯父や叔母には本当に感謝している。
だが、一人暮らしのこの状況をとても気楽に感じているのも確かだった。
そしてユキのことだ。
ユキの家とは私が両親を亡くす前に家族ぐるみで仲良くしていた。
両親の葬式以来、ユキは週に2,3回私の顔を見に来る。
見に来るというか・・・家事をしにくる。
・・・私は、火が使えないから。

私は部屋着に着替えてリビングへ向かった。
テーブルには既においしそうな湯気を立てた料理が並べられている。

「いっつも悪いな」
「気にすんな。さ、食べよう」
「ありがと、いただきます」
「いただきます」

さて、この口調じゃ女か男かなんて分からないだろう。
まず初めに言葉を発したのが私。
鹿沼美桜という。
15歳。高校1年生。
今までの会話でも分かると思うが男言葉で喋るのが癖になっている。
そして言葉を返したのがユキ。
石川由喜。
正真正銘の男だ。
私より13歳年上の会社員。


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