レイプ候補-1
この時美涼との継続セックスの進捗が思わしく無かった千章にとって、磯崎恵利子以外の選択肢であった少女の存在があった。
少女の名は、結城美桜(ゆうきみお) 中学二年生 14歳 水泳部。
ショートカットの似合う少女で、そのヘアスタイルを除いては千章が中学時代に想いを寄せた少女のひとり、太田加奈を想い起される容姿を持つ少女であった。
結論から言えば強姦魔千章流行は、結城美桜レイプ計画を見送る事になる。
要因はふたつあり、ひとつはその調査過程で磯崎恵利子との再会があった点、もうひとつはまだ中学二年生の少女がレイプとその後の継続セックスと言う過剰な負荷に、精神的、肉体的に耐えられないであろうと言う憶測に基づく判断であった。
しかしそれは結城美桜をより過酷な運命に誘う結果に繋がる。
・・・レイプ候補・・・
まだあどけなさ残るその魅力に惹かれたのは、強姦魔千章流行だけでは無かったのである。
藤岡精児(ふじおかせいじ)、父藤岡留吉の優れた頭脳と共にその歪んだ性癖を引きついだ男。
その性的趣向は、千章流行より些か幼い少女たちが標的であり、まさに結城美桜は精児にとって格好の獲物であった。
そして美桜に取っては、不幸にも幾つかの偶然が重なり悲劇は起きる。
その日藤岡精児は好みの少女を物色しつつ、県内の集合商業施設内を徘徊していた。
そこでゲームセンターのクレーンゲームに、一喜一憂する少女二人組のひとりに目を奪われる。
まるで地団駄でも踏むかの様な仕草は、ともすればひどく滑稽な行為であるが、少女の容姿がそれを包み込み愛らしい仕草へと変えてしまう。
ミニスカートの裾をなびかせながら、景品が取れぬ事に悔しがる少女はとても微笑ましく感じられる。
しかしそんな可愛らしい少女が、性的嗜好の精児にとっては格好の獲物であった。
そのスタイルに不釣り合いなまでの幼い表情とその仕草に、精児は磯崎恵利子とはまた違った魅力を少女に感じるのである。
(……どんなパンティーを履いているか見てやる!)
精児はいつもの様に手鏡を使い、少女のスカートの中を覗き見る事を試みるも、上手くタイミングを掴めなかった。
普段精児が覗き見るタイミングは、書店等で静止した状態の少女に対しての行為であった。
しかし今回は周囲の人目や少女が連れ立つ友人、そして何より少女自体が前述の通り動きがあり、手鏡を足元に忍ばせる様なタイミングが掴めなかったのである。
それはかえって少女に対する欲求と執着を痛い程に刺激し、より深刻な結果へと繋がって行く事になる。
全くの偶然ではあるが藤岡精児の結城美桜に対するレイプは、父親である藤岡留吉が行った太田加奈に対するソレに酷似し、千章のソレと異なり突発的な事故的要素を多分に含んでいた。
まるでその魅力に吸い寄せられるが如く、友人と別れ帰路に着く美桜の後を尾行する精児。
そして千章流行が福井美涼をレイプした様なシューチュレーションを、緻密な計画や調査準備等無く偶然且つ幸運に手に入れる。
美桜を尾行し気が付くと玄関口まで入り込んでいる精児の姿がそこにはあった。
「……、きゃっ!」
気配無く自分の背後に男が立っていた事に気が付くと、脅え今にもより大きな叫び声を上げそうな美桜の顔がそこにはあった。
咄嗟にその細い首筋に両手をかけ、美桜ごと押し倒す様に室内に押し入る精児。
瞬間的な焦り、驚き、恐怖と複合的な心情が精児の中で爆発し、我を失い凶行へと走らせる。
(……、……、……)
気が付くと自らの足元に倒れ込んでいる美桜を前に、悔恨の情に精児は到底平常心ではいられなかった。
(しまった……、いったい何て事をしてしまったんだ。俺は……、俺はなんて事を……!)
今までは精々盗撮や痴漢、猥褻行為程度だった精児にとって、いくらはずみとは言え少女の首に手をかけてしまったのは不味かった。
悔やんでも悔やみきれない状況に、精児は暫し呆然と立ち尽くす。
(殺人……、殺人者……、殺人罪……)
精児の脳裏に、致命的且つ壊滅的な単語が駆け巡る。