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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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1.過去は消えない-5

 しかしそんな男を相手にしているだけで、二時間ほど経った時には、二人の手元に十万円近い金額があった。戻ればすぐリクエストが入ってしまうから、梨乃に途中退座を申し出る機会を逸してしまう。ひょっとしたらもうすぐ「稼ぎ」に梨乃が満足して帰ろうと言い出すのではないか、という思いも出てきて、何も言い出せずにいた。
 そもそも、今日梨乃が悠花を何故ここに連れてきたのか。J女学院の制服サイズに合う子を探していたのではない。J女学院の制服姿が似合う、十人男がいれば十人が目を奪われるような悠花を『餌』として、男たちを引っ掛けることが目的だ。この歳から悠花は自分の容姿が他の子よりも上回っているという自覚はあったから、自惚れを差っ引いたとしても、そんな梨乃の目論見を確信していた。
「リカちゃん。またリクエストきたよ。……でも、例のアイツ、なんだけどさ、どうする?」
 従業員の男が梨乃に判断を伺った。例のアイツ? 悠花には訳が分からなかったが、
「んんー……、やーっぱ、食いついちゃったかぁ……」
 と、さっきまでリクエストには即応していた梨乃が、一瞬躊躇している。
「NG?」
「あいつ、マジキモだからなぁ……、でも、金っ払いは超いいしぃ……ま、とりあえず交渉部屋行くわ」
 部屋を出てすぐの対座する部屋を「交渉部屋」と呼ぶらしい。
 そこにはこれまでの男たちよりも輪をかけてヒドい男がいた。段腹が浮き出るほどに色褪せて生地が薄くなったTシャツで、大して暑くもないのに首回りに汗シミが浮き出ている。薄くなって僅かに残る髪の毛が長く伸びているから余計にみすぼらしく、銀ブチ眼鏡は頬肉に密着しそうになって自ら発する熱で少し曇っている。一重まぶたが垂れ下がり、団子鼻、乾いて皮の捲れた唇。記憶をさらっても、悠花が今まで見た男で、もっとも醜悪な容姿をしているかもしれなかった。
「……カラオケ行こうよ、カラオケ。3人でさ」
 梨乃が席につくなり、こめかみに垂れてくる汗をハンドタオルで拭いながら言う声も、聞いているだけで悪寒を憶えそうだった。
「え〜、なんでよ。30分以上かかんじゃん」
「いいじゃん。……ね?マキちゃん」
 男は少し小声になって、「1時間付き合ってくれたら、あと2本出すからさ?」
 実はこの時、悠花が住んでいたカナダの街には無い、カラオケという場所には行ったことがなかった。どういうところか分からないから、男の言葉には返事をせず、黙って梨乃のほうへ困った目を向けた。
「ん〜、5本って言ったらどうする?」
 梨乃は値を釣り上げる。悠花は少し目を見張って梨乃を見た。5本ということは5万円だ。
「いいよ、5本ね。予約するから」
 しかし男はあっさり承知して、スマホを弄り始めた。
 明らかに5万という金額は、他の男たちに提示していた金額を著しく凌駕している。こんな風体の男だったから、金額交渉で断られてもいいと、梨乃は男の言葉がイエスでもノーでも同価値の金額を狙ったのだろう。だが男は躊躇無く、イエスの答えを出した。
「り、リカ、ちゃん」
 呼びかけて振り返った梨乃にコソコソと耳打ちする。「私、この人さすがに無理、なんだけど」
「あー……、わかる。わかるんだけど……今日これでもう終わりにするから、お願いっ。ね? コイツ、こういうことには金使いまくりだから、いっぱい稼げるし」
「でも……」
「大丈夫、1時間我慢するだけでいいから。あとコイツ、マジキモ男のくせにナニサマ野郎だからさ、ちょっと上からいかないと調子こくんだ。私と同じような感じで接した方がいいよ。マジで」
「取れたよ。すぐ入れるみたいだから、行こ行こ」


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