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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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1.過去は消えない-4

「お腹空いてると思って……。ダ、ダメかな?」
「んーまぁ、確かに、腹減ってんだけど。……1本でいいんだよね? 前金だから」
「う、うん。行こ行こ」
 と、立ち上がりながら男がポケットから一万円札を出して梨乃に手渡すのを見て、悠花は「1本」の意味を理解し、驚きながらも何も言えず、名札を外す梨乃を真似て外へ出た。
 ファーストフード店に入り、窓際の隅席で待っていると、男がここに来るまでに聞いていた二人の注文をトレイに載せて持ってくる。
「そ、それにしても、き、君、J女学院のコだよね? J女のコも、ああいうところ、来るんだねぇ……。いくつ?」
 店で会ったときから、梨乃と話していても、明らかに興味は悠花の方に向いていた。制服姿を執拗に眺めてくる。
「高2だよ、高2」
 悠花が困る前に、梨乃が偽る。悠花も梨乃も、外見は十六、七歳と言っても大きな違和感は無い。高校の制服を身にまとっているから尚更だった。
「そ、そうなんだぁ……。えっと、二人は、友達かな?」
「ヂモトモだよ」
 それからずっと、男が質問し、一言だけ答える、その繰り返しで大よそ会話にはなっていなかった。全て、ハンバーガーを頬張る梨乃が答えており、オレンジジュースだけ頼んだ悠花は「はあ」とか「うん」とか適当な言葉を発しているだけでよかった。
「えっと、……じゃ、じゃぁ……」
「あ、オッサン、もうそろそろ30分なんだけど」
「え?」
 腕時計を見る。「ま、まだ早くない?」
「……店出た時点から30分だよ。そんなの当たり前だし。それにオッサンの話、超つまんねーから、もう終わりにしたいんだけど?」
「そ、そっか。……延長は、無理かなぁ……?」
「はぁ? オッサン、ヒトの話聞いてる? するわけないじゃん」
 梨乃はハンバーガーの包み紙をくしゃくしゃと丸めてトレイの上に投げると、席を立って店を出て行った。置いていかれそうになった悠花は、男と目を合わせるのも嫌だったから、振り返りもせず後を追っていった。
「……こういうこと。簡単でしょ? 万札でもらっちゃったから、あとで割るね」
 追いついくと、歩きながら梨乃が言った。
「これって、……ヤバいんじゃないの?」
「ヤバくないよ。ウリとかしてるわけじゃないじゃん。JKと話せないキモオヤジが、金でその時間を買ってるだけだし。30分で1万とか、マジ終わってるよね」
 あはは、と笑って梨乃は再び"Love Affair"へのエレベータに乗り込んだ。
 しかし悠花としては、店の雰囲気といい、従業員の男の風体といい、中学生であることを伏せなければならないことといい、思いつく全てを総合しても明らかに違法だろうことを感じとっていたから、何か理由をつけて帰ろうと考え始めていた。
 部屋に戻って、ふと鏡に目をやる。
(マジックミラー……?)
 恐らくあの鏡の向こうから、さっきのサラリーマンのような男たちがこちらの様子を見ているのだろう。改めて見回してみると、部屋にいる女子高生の中には膝を立てて座り、鏡の方へスカートの中を覗かせているような子もいた。誘っているのだ。
「はい、即でマキちゃんご指名、リクエストでーす。ニコイチOK、何か競争率上がってるらしくて、2本出してくれるってよ」
 鏡の向こうからの視線に、スカートの丈を気をつけて座ろうとしたところで、直ぐに次の指名が入った。
 男と店を出る前に話をして、どこに行くか決める。大抵は行き先はファーストフード店やコーヒーショップで、そこでも話をして、店に戻る。20代から、恐らくは40代か、50代もありうる男たちの話は総じてつまらなく、30分経ったところであっけなく打ち切りになった。そもそも見た目もとても女の子にモテるような感じのしない、全員が嫌悪感しか催さないような男たちだった。


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