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宮咲ほのかのものがたり
【学園物 官能小説】

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第六話「ばかげた日常は幸せな日常」-1

 初夏。
 みーん、みーん、みーん、蝉の合唱が夏空に響く。
 緑色に生える木々を強い日差しが照らしている。
 景色はアスファルトの熱でゆらゆら揺らいでいるようだ。


「あつい〜」


 うめく亜佐美。
 いつもは垂れるポニーテールの尻尾を、今日は首筋に当たらないようにアップ気味にしている。
 健康的な夏の日差しに彼女はより魅力を増しているように見えた。
 亜佐美はもともとスポーティーなイメージがある。夏にはぴったりの女性だ。


「あついね」


 ほのかもまた汗だくだった。
 ほのかは汗臭くなるのが人一倍嫌いだった。
 頻繁に制汗剤スプレーを首、ブラウスを引っ張って体の中に当てる。


 気持ちいい〜。


 でも、それも一瞬のこと。
 長続きする効果はないし、汗は止まらない。


 六月の下旬、これからまだまだ暑くなる季節。
 ほのかは正直、夏があまり好きではない。


 汗は嫌い。
 プールは恥ずかしい。
 泳ぎも得意ではない。
 日焼けしてすぐ肌が赤くヒリヒリするのも嫌いだ。


 色白なのは嬉しいんだけどなぁ。


 日焼けすると黒くならずにやけどみたいに黒くまだらになって皮がはがれる。
 痛くていやだ。


「今日は、抱きついたら嫌だよ」


「あー、暑いけど、ほのほのを抱けないなんて、ちょっと嫌かもー。こうなったら、エアコンの効いた教室で抱くしかっ!」


「ぇ、そ、それはちょっと照れる」


 慌てるほのか。
 暑くなっても毎日のように抱きついてくる亜佐美に、ほのかは少し困っていた。
 もともと恥ずかしがり屋なのに、亜佐美は周りを気にすることなく抱きついてくるのだ。
 だからといって、人がいない所までいって抱きつくとなると、怪しい感じで心臓がばくばくになる。


 言っておくが、レズではない。


「照れるとかいうな! いいではないか、いいではないか。はっはっはっは」


「きゃー」


 亜佐美が背後から抱き付いてくる。
 蒸し暑い。押しのけようにも力は亜佐美がはるか上だ。


「いやもいやも好きのうちよのう。ほっほっほっほ」


 暑さでどうも亜佐美の頭は狂ってるらしい。
 うー、とうなりながら抵抗するほのか。


「てーい」


「へ?」


 あろうことか亜佐美は胸元から手を入れてきた。
 いきなりのあきれた行動にほのかも呆然。


 なにしてんだ、この人?


 と、思っているや否や、亜佐美の手はブラの中にまで入ってくる。
 小さい。でも、わずかにふくらんだ乳房が手でおおわれる。


「な、なに考えるの、亜佐美ちゃん」


「ふふふ」


「……ッ! ぁぁ」


 声が出てしまう。
 亜佐美の手はおっぱいの突起を軽くこするように触る。
 そして、そのままもみしだく。


「揉めばおおきくなるわよぉぉぉぉ!」


「んんっ」


 湿った声があがる。
 震える身体をこらえながら、ほのかは右手をびっと伸ばした。

「めっ!」

 一喝とともに、ほのかは無理やり身体をひねりながら、チョップを亜佐美にする。


「痛っ」

「いい加減にしなさい」


 キッとにらむほのかに、亜佐美は手をのけて、ペロっと舌を出す。
 ちょっと悪ノリが過ぎるのだ、亜佐美は。

 下ネタが好きで、
 おなにーだとか、
 ふぇらだとか、
 せっくすだとか、
 いろいろと言葉を教えられた。


 ひょっとして、レズ?


 それは分からないが、それは違うだろうと、すぐに否定する。
 うんうん、友達を疑ってはダメだとうなずく。


「言っとくけどレズじゃないからね」


 ほのかの心を読んだかのように亜佐美が言った。
 そして、大胆に宣言する。


「バイよ!」


 なぜか胸をはる亜佐美。
 大きな胸がぷるんとゆれる。


「倍?」


 ほのかがアホみたいな声で問い返す。
 笑う亜佐美。
 ぽかーんのほのか。

 なにはともあれ、いつもの馬鹿げた日常だった。



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