それぞれの道2-25
「うおっ、お前何泣いてんの!?」
あたしの涙にいち早く気付いた塁は、少し焦りながらあたしの顔を覗き込んだ。
指摘されると、余計に涙がポタポタ床にシミを作っていくだけだ。
「今の会話に泣く要素なんて一つもなかっただろ? なんかあったのか?」
「……何でもない……」
「久留米くんがゲイだから悲しくなったのか?」
すかさず久留米さんの蹴りが再び背中に入ると痛さに悶えながら転がる塁。
「玲香、助けて! お前の旦那はDV男だぞ!」
あたしに助けを求める塁を見てると、泣きながらも笑いが込み上げてくる。
塁とはこんないい関係になれるとは夢にも思わなかった。
好きで好きで、身体だけでいいからどこかで繋がっていたくて。
突き放しきれない塁の残酷な優しさと、あたしの
しつこい未練が生んだ歪な関係。
あたし達が続けていた身体だけの関係は、あまり人に言えることじゃないけれど、これだけはハッキリと言える。
――塁を好きになって、よかった。
その調子のいい明るさに、久留米さんがどれだけ救われてるのか、あんたは知らないでしょ?
久留米さんが今まで抱えてきたものを、塁は全く知らないけれど、それでいい。
それでいいから、これからも久留米さんと仲良くしてね。
「塁、ありがと」
あたしは、誰にも聞こえないくらいの小さな小さな声でそう呟いた。