それぞれの道2-24
「送別会、してくれるの?」
目を丸くして塁の顔を見上げれば、彼は少しイタズラっぽくシシシと笑いだす。
「あとは、お二人さんの婚約祝いも兼ねて……で、いいんだよな?」
塁のニヤケた笑みにつられた久留米さんは、ケージから右手を出すと、ビシッと親指を立てて少し得意気な顔を見せた。
「ちょ、ちょっと、何で塁がそれ知ってんの!?」
「だってオレ、久留米くんに“指輪買いにいくの付き合ってくれ”って頼まれてたもん。
野郎二人で指輪を選ぶ絵面はなかなかシュールだったよな? 下手したらゲイだと思われてたかも」
「おい、ゲイはシャレになんねえからやめてくれ」
久留米さんはそう言って、塁とゲラゲラ笑い合っていた。
そんな二人を見てると、何だか胸が苦しくなってきた。
よくわからない感情に、なぜか再び目の奥から熱いものが込み上げてくる。
少しボヤけた視界の先には、相変わらず楽しそうな笑顔。
友達と楽しげに話すなんてありふれた光景なのに、いや、ありふれた光景だからこそあたしの心は揺さぶられる。
こんな当たり前の幸せを、久留米さんは自らを戒めるように、長い間遠ざけていたんだ。
……でも。
もう、あなたは一人ぼっちじゃないんだよ。
そんな二人を眺めていたら、手の甲にポツリと熱い雫が一つ、こぼれ落ちた。