それぞれの道2-22
しかしその開いたままの口もやがて閉じて、そのままニヤリと歪んでいく。
ついにはそこから我慢しきれなかったらしい、豪快な笑い声が部屋に響いた。
「なるほどな、コイツが憎たらしいのがなんとなくわかったよ」
そう言って久留米さんはあたしと目を合わせるとニッと白い歯を見せる。
生まれ変わりといったオカルトチックな話なんてまったく信じなかった久留米さんも、もしかしたらこの妙な巡り合わせに、少しだけ運命じみたものを感じたのかもしれない。
だって、すでにシゲを見つめるその顔が、懐かしそうで嬉しそうなんだもの。
そんな彼の表情を見ていたら、なんでか目の奥がジワリと熱くなってきた。
生まれ変わりの証拠なんて無いけれど、彼がこうやって嬉しそうに笑うなら、勝手に信じるくらいいいよね?
あたしは人差し指で目尻を擦りながら、誰に言うわけでもなく、そう心の中で呟く。
「おい、お前が噛んだところ、血が出てきてんぞ。仕返しに長嶋監督みたいに青ひげ描いてやろうか?」
そしてあたしは、塁の手中で震えているシゲの背中をツンツン突いている久留米さんを黙って見つめていた。