それぞれの道2-19
あんぐりと口を開いたまま固まるあたしと塁。
あたしの手のひらで丸くなってるハムスターは、どこ吹く風と言った感じで相変わらず鼻をヒクヒクさせていた。
「コイツ、噛んだ!」
久留米さんは噛まれたらしい人差し指をあたし達に見せながら、ハムスターを睨み付けていた。
でも、この子がとてもこんな暴挙に出たとは信じられなくて、あたしはどうリアクションをとればいいのかわからない。
何も言えないまま固まっていると、
「なあ、コイツ、噛んだ!」
と、再び荒げた声であたし達に訴えた。
「二回言わなくても見りゃわかるって」
先に反応したのは塁だ。
「何なんだよ、コイツ! ハムスターってこんな凶暴なのかよ!」
まるで塁が悪いかのように、久留米さんは彼に詰め寄りながらこの子を指差している。
「いや、ジャンガリアンは飼いやすいし、コイツは特に大人しいんだけどな。ほら、おいで」
塁はそう言ってあたしからハムスターを受けとるけど、やっぱり言った通り、黙って塁の手の中で身体を丸めているだけだった。