それぞれの道2-16
「さっすが玲香様! よっ、女ムツゴロウ!!」
「それって誉めてんの……?」
ジロッと塁を睨み付けるけど、あたしの視線に気付かない奴は、ニコニコしながらケージの扉を開けて、中に手を入れた。
「さあ、お前もこのお姉ちゃんにお礼言わないとねえ」
そう言って塁は、手のひらの上に乗っかった一匹のハムスターをあたしの目の前に差し出した。
「わあ……」
塁の手のひらに乗せられた“ソレ”を見た瞬間、あたしの顔は確実にだらしなく綻んでいたと思う。
茶褐色のフサフサした身体に、背中に一本線を引いたみたいに濃い毛並み。
鼻をヒクヒクひっきりなしに動かして、怯えたように身体を震わせるその姿は、守ってあげたいほど小さくて儚かった。
「か、かわいい!」
「だろ? 梓の大事な家族だから、しっかりお世話してやってくれよ」
「うん!」
実物を目の前にしてしまうと、その可愛さにメイと同じ屋根の下に置いておく不安よりも、お世話する楽しみの方が勝ってしまう。
「ほれ、触ってみ」
塁に渡されて手のひらに乗せられたハムスターは、ふにゃふにゃ柔らかくて、温かくて、心までホンワカ温かくなった。